感想を語ったり普通に日記だったりするブログ。時々愚痴も出る。
語るのは主にTRPGリプレイものとサンホラと自サイト関連の話。
トランは旅の中で『楽しい』を感じていったけど、レントは初めて抱いた感情が前任者に対する嫉妬とかなんとかだったら面白いな(悪趣味)とか思ったらこんなんなった。いや、表現できてないと思うけどさ。
レントはトランに微妙な確執があるといいよ。
実際のところは見張り立ててるのかとか、そういう点は気にしないヨ!
レントはトランに微妙な確執があるといいよ。
実際のところは見張り立ててるのかとか、そういう点は気にしないヨ!
+ + + + + + + + + +
『機能不全』
目が覚めた。
何かの気配を感じたわけではない。そんな事態であればギルドメンバーのシーフが真先に気付いてしかるべきだ。
ただ、睡眠の途中で目が覚めてしまった。それだけのこと。
見張りの交代の時間まではまだ猶予がある。もう一眠りしても問題はないのだが、目が冴えてしまってしばらく眠れそうにない。
わたしはゆっくりと首を動かした。いびきをかいて眠る神殿の犬と、油断なく手元に銃を置いたまま眠る少女の姿が目に入った。そして、焚き火を見つめる継承者殿の姿も。
齢16の少女は膝を抱えながら燃える炎を見ていた。その瞳が揺らいでいるのは炎が揺らめく故か。
虫の音、梟の声に混じってかすかに鈴の音が響いた。継承者殿の右手に揺れる安っぽい鈴が奏でた音色。
その鈴に視線を落とした継承者殿が、唇をかみ締めたのが暗がりの中でも目視できた。
――不可解だ。
わたしは一呼吸置いて、声をかけた。
「異常はありませんか、継承者殿」
「あ、レントさん」
継承者殿の首がひょこりと上がった。
「大丈夫ですよっ! あたしが見てますから、どうぞどうぞっ。寝てて下さい~」
先ほどまでの表情が嘘のように、継承者殿は笑っていた。
やはり、不可解だ。
わたしは立ち上がると焚き火のそばに歩み寄った。そして腰を下ろす。
「しばらく眠れそうにありませんので、わたしも見張りをすることにします」
「そうですか? では、一緒に見張りましょう~」
同じ火に照らされて継承者殿の笑う顔が闇の中で浮かび上がる。
有事の際に動ける戦力が増えて余裕が生まれたということだろうか。
ちらりと顔を見た後は炎に視線を移した。自然と継承者殿の目も炎に向かう。
「……」
「……」
沈黙が落ちていた。見張りという性質上、無闇にしゃべるというのも問題だろうが。
そうしていくばくかもたたない内に継承者殿はわたしの方に向き直った。
「あのぅー……レントさん? 前々から気になっていたんですが~……」
「なんですか」
「やっぱり、トランさんとは別人……なんですよね?」
「その通りです」
おそるおそるといった様子で発せられた問いに対する答えはいたってシンプル。
「同じセプターの名を持つのはドクトル=セプターによって生み出した存在であることを表すただのコードにすぎません。
前任者はあくまで前任者であり、わたしにデータを提供した者に過ぎません」
「そんなの……っ」
継承者殿が何かを言いかけて、飲み込んだ。
こちらを見てくる緑色の瞳を静かに見つめ返す。
「何か?」
「そんな言い方……っ……しないで下さい……!
トランさんはデータを集めるために旅をしていたわけじゃないですっ!」
「それは当然です。前任者に与えられた任務は薔薇の武具を集めること。データの集積はその副産物にすぎません」
「ですからっ!」
継承者殿が言葉を荒げる。何かを言いたくて、言葉にならなくてもどかしいといったように見える。
わたしはわずかに眉を寄せた。
「継承者殿が何を仰りたいのか、理解いたしかねます」
そう言われた継承者殿は、今度は困った顔をした。
継承者殿が何を言わんとしているのかわからない。
前任者は薔薇の武具を集めよという命令で継承者殿に同行していた。そして命を落とした。任務の遂行が不可能になったからわたしが派遣されてきた。
それだけのことだ。異論を挟む余地などないはずのこと。
それを、何故継承者殿は反対しようとされるのか……。
継承者殿はうつむいていた。垂れて来た髪が遮ってその表情はわからない。
そのまま様子をうかがっていると、震えるような声がもれてきた。
「トランさんは、楽しいって言ってくれたんです。
『楽しいからこのままずっと旅を続けていけたらと思います』って、そう言って……!」
「命を落としました。
しかも、聞いたところでは打つ手を間違えた結果だったと」
わたしの言葉に、うつむいていた継承者殿が顔を上げた。
「トランさんは間違ってなんかいませんっ! トランさんのおかげでたくさんの人の命が救われたんです!」
「そのために自分が死んでは仕方がない。命を落としては、どうやって任務を続行できるというのか」
「……っ」
継承者殿が泣きそうな顔でわたしを見る。
どうしてそんな顔をするのか。わたしは客観的な意見を述べただけのこと。
継承者殿は何も言わず、拳を握り締めてわたしを凝視していた。それが何の感情を意味するのかわからないほど複雑な表情を浮かべて。
口を強く結ぶと、結んだ唇がかすかに動いた。
「やっぱり……トランさんじゃないんですね……」
口の中でつぶやいただけのはずの言葉が、不思議なほどはっきり聞こえた。
いつもならば「そうだと申し上げました」と返すだろうに、この時は何故か言葉が出なかった。
吹き抜けた風で継承者殿のマフラーがたなびいた。大きく揺れた炎が継承者殿の顔に濃い影を落としてみせる。
継承者殿の手首についた鈴が立てた、ちりんという音が妙に耳についた。
「すみません、ノエル。少し寝過ごしてしま……」
寝起きで少し間延びした声で言ってきたのは神殿の犬だった。
しかし、さすがに妙な空気に気付いたらしく眉を寄せながら継承者殿とわたしを交互に見た。
「何かあったんですか?」
「なんでもないですよっ。ね、レントさんっ?」
「ええ」
「そうですか?
おい、悪の幹部。お前、ノエルに何か言ったんじゃないだろうな」
「神殿の犬は話も聞けんのか。何もないと継承者殿が言っていただろう」
馬鹿にしたように言うと神殿の犬はすぐに突っかかってきた。
「なんだと!?」
「クリスさんクリスさん、落ち着いて下さい~! ほんとに大丈夫ですからっ!
えとっ、見張りの交代、お願いしますねっ」
「え? あ、あぁ」
継承者殿は見張りを神殿の犬に任せると、どこか足早に寝袋に向かっていった。
面食らった顔で後姿を見送っていた神殿の犬が、ふとわたしを見た。
「……それで、お前はどうするんだ?」
憮然とした顔で神殿の犬が問いかけてくる。わたしは立ち上がると淡々と告げた。
「神殿の犬といるつもりはない。わたしも休む」
「そうか。
……おい、レント」
横を通り抜けようとした時、神殿の犬が呼び止めた。
「お前が何を考えているか知らないけどな。――ノエルを悲しませるようなことはするなよ」
「キミの言葉は不可解なことが多い」
「お前の方が不可解だっ!? これくらいわかれ!」
「……わたしとて、意図して悲しませようとはしていない」
「なに? なんと言った?」
わたしのつぶやきを聞き逃した神殿の犬に背を向け、暗闇へゆっくりと足を進めて行く。
「おい、レント! 私の質問に答えろ!」
後ろの方で何か騒いでいるものもすぐに意識から除いていった。
不可解だ。
実に不可解だ。
継承者殿が前任者の名をつぶやく度に。
継承者殿が前任者のことでうなだれる度に。
わたしの中の回路がわずかに支障をきたす。
これが何かわからない。己の身のことでありながら、わからないとは不可解というより他にない。
一度ドクトル=セプターに見てもらった方が良いかもしれない。システムにトラブルがあるのなら早く処置するべきだ。
それとも、これが前任者にも現れたという"感情"というものだろうか。
こうも御し難いものであるなら邪魔な存在でしかないと思うのだが。
わたしはふと足を止め――口の中で呟いた。
ノエル、と。
目が覚めた。
何かの気配を感じたわけではない。そんな事態であればギルドメンバーのシーフが真先に気付いてしかるべきだ。
ただ、睡眠の途中で目が覚めてしまった。それだけのこと。
見張りの交代の時間まではまだ猶予がある。もう一眠りしても問題はないのだが、目が冴えてしまってしばらく眠れそうにない。
わたしはゆっくりと首を動かした。いびきをかいて眠る神殿の犬と、油断なく手元に銃を置いたまま眠る少女の姿が目に入った。そして、焚き火を見つめる継承者殿の姿も。
齢16の少女は膝を抱えながら燃える炎を見ていた。その瞳が揺らいでいるのは炎が揺らめく故か。
虫の音、梟の声に混じってかすかに鈴の音が響いた。継承者殿の右手に揺れる安っぽい鈴が奏でた音色。
その鈴に視線を落とした継承者殿が、唇をかみ締めたのが暗がりの中でも目視できた。
――不可解だ。
わたしは一呼吸置いて、声をかけた。
「異常はありませんか、継承者殿」
「あ、レントさん」
継承者殿の首がひょこりと上がった。
「大丈夫ですよっ! あたしが見てますから、どうぞどうぞっ。寝てて下さい~」
先ほどまでの表情が嘘のように、継承者殿は笑っていた。
やはり、不可解だ。
わたしは立ち上がると焚き火のそばに歩み寄った。そして腰を下ろす。
「しばらく眠れそうにありませんので、わたしも見張りをすることにします」
「そうですか? では、一緒に見張りましょう~」
同じ火に照らされて継承者殿の笑う顔が闇の中で浮かび上がる。
有事の際に動ける戦力が増えて余裕が生まれたということだろうか。
ちらりと顔を見た後は炎に視線を移した。自然と継承者殿の目も炎に向かう。
「……」
「……」
沈黙が落ちていた。見張りという性質上、無闇にしゃべるというのも問題だろうが。
そうしていくばくかもたたない内に継承者殿はわたしの方に向き直った。
「あのぅー……レントさん? 前々から気になっていたんですが~……」
「なんですか」
「やっぱり、トランさんとは別人……なんですよね?」
「その通りです」
おそるおそるといった様子で発せられた問いに対する答えはいたってシンプル。
「同じセプターの名を持つのはドクトル=セプターによって生み出した存在であることを表すただのコードにすぎません。
前任者はあくまで前任者であり、わたしにデータを提供した者に過ぎません」
「そんなの……っ」
継承者殿が何かを言いかけて、飲み込んだ。
こちらを見てくる緑色の瞳を静かに見つめ返す。
「何か?」
「そんな言い方……っ……しないで下さい……!
トランさんはデータを集めるために旅をしていたわけじゃないですっ!」
「それは当然です。前任者に与えられた任務は薔薇の武具を集めること。データの集積はその副産物にすぎません」
「ですからっ!」
継承者殿が言葉を荒げる。何かを言いたくて、言葉にならなくてもどかしいといったように見える。
わたしはわずかに眉を寄せた。
「継承者殿が何を仰りたいのか、理解いたしかねます」
そう言われた継承者殿は、今度は困った顔をした。
継承者殿が何を言わんとしているのかわからない。
前任者は薔薇の武具を集めよという命令で継承者殿に同行していた。そして命を落とした。任務の遂行が不可能になったからわたしが派遣されてきた。
それだけのことだ。異論を挟む余地などないはずのこと。
それを、何故継承者殿は反対しようとされるのか……。
継承者殿はうつむいていた。垂れて来た髪が遮ってその表情はわからない。
そのまま様子をうかがっていると、震えるような声がもれてきた。
「トランさんは、楽しいって言ってくれたんです。
『楽しいからこのままずっと旅を続けていけたらと思います』って、そう言って……!」
「命を落としました。
しかも、聞いたところでは打つ手を間違えた結果だったと」
わたしの言葉に、うつむいていた継承者殿が顔を上げた。
「トランさんは間違ってなんかいませんっ! トランさんのおかげでたくさんの人の命が救われたんです!」
「そのために自分が死んでは仕方がない。命を落としては、どうやって任務を続行できるというのか」
「……っ」
継承者殿が泣きそうな顔でわたしを見る。
どうしてそんな顔をするのか。わたしは客観的な意見を述べただけのこと。
継承者殿は何も言わず、拳を握り締めてわたしを凝視していた。それが何の感情を意味するのかわからないほど複雑な表情を浮かべて。
口を強く結ぶと、結んだ唇がかすかに動いた。
「やっぱり……トランさんじゃないんですね……」
口の中でつぶやいただけのはずの言葉が、不思議なほどはっきり聞こえた。
いつもならば「そうだと申し上げました」と返すだろうに、この時は何故か言葉が出なかった。
吹き抜けた風で継承者殿のマフラーがたなびいた。大きく揺れた炎が継承者殿の顔に濃い影を落としてみせる。
継承者殿の手首についた鈴が立てた、ちりんという音が妙に耳についた。
「すみません、ノエル。少し寝過ごしてしま……」
寝起きで少し間延びした声で言ってきたのは神殿の犬だった。
しかし、さすがに妙な空気に気付いたらしく眉を寄せながら継承者殿とわたしを交互に見た。
「何かあったんですか?」
「なんでもないですよっ。ね、レントさんっ?」
「ええ」
「そうですか?
おい、悪の幹部。お前、ノエルに何か言ったんじゃないだろうな」
「神殿の犬は話も聞けんのか。何もないと継承者殿が言っていただろう」
馬鹿にしたように言うと神殿の犬はすぐに突っかかってきた。
「なんだと!?」
「クリスさんクリスさん、落ち着いて下さい~! ほんとに大丈夫ですからっ!
えとっ、見張りの交代、お願いしますねっ」
「え? あ、あぁ」
継承者殿は見張りを神殿の犬に任せると、どこか足早に寝袋に向かっていった。
面食らった顔で後姿を見送っていた神殿の犬が、ふとわたしを見た。
「……それで、お前はどうするんだ?」
憮然とした顔で神殿の犬が問いかけてくる。わたしは立ち上がると淡々と告げた。
「神殿の犬といるつもりはない。わたしも休む」
「そうか。
……おい、レント」
横を通り抜けようとした時、神殿の犬が呼び止めた。
「お前が何を考えているか知らないけどな。――ノエルを悲しませるようなことはするなよ」
「キミの言葉は不可解なことが多い」
「お前の方が不可解だっ!? これくらいわかれ!」
「……わたしとて、意図して悲しませようとはしていない」
「なに? なんと言った?」
わたしのつぶやきを聞き逃した神殿の犬に背を向け、暗闇へゆっくりと足を進めて行く。
「おい、レント! 私の質問に答えろ!」
後ろの方で何か騒いでいるものもすぐに意識から除いていった。
不可解だ。
実に不可解だ。
継承者殿が前任者の名をつぶやく度に。
継承者殿が前任者のことでうなだれる度に。
わたしの中の回路がわずかに支障をきたす。
これが何かわからない。己の身のことでありながら、わからないとは不可解というより他にない。
一度ドクトル=セプターに見てもらった方が良いかもしれない。システムにトラブルがあるのなら早く処置するべきだ。
それとも、これが前任者にも現れたという"感情"というものだろうか。
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自己紹介:
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普段自分の趣味を語らないんですが、
ネット上でくらいはっちゃけちまえ
と思いブログ開設。
TRPGリプレイについてとか
サンホラについてとか語ったり
時々愚痴も入る。人間だもの。
あ、カウンターは自作です。
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