感想を語ったり普通に日記だったりするブログ。時々愚痴も出る。
語るのは主にTRPGリプレイものとサンホラと自サイト関連の話。
やっちまいましたレスボス編。ソフィリス(混ぜるな)の性格がよくわからんです。
この間ちょろっともらした妄想設定がちょっと組み込まれています。ミーシャには何かが視えている。
ミーシャの巫女生活を描く必要はあるだろうか……。
この次はエレフ編ですよ。ジジイとの珍道中ですよ。ミロスはぼけぼけなんだぜ!
なんというか、どんどん表現が貧しくなっていっている気がします。サイトの読み物読み返してなんだか色々虚しくなりましたさ。
+ + + + + + + + + +
―― ミーシャ……。
誰かが呼ぶ声がした気がした。少女はそれで目を覚ます。
鳥の囀り。遠くからは波の音が聞こえる。今触れている柔らかい感触は……布団?
ミーシャはゆっくりと体を起こした。
「……」
「目が覚めましたか?」
穏やかな女性の声。ミーシャは声がした方向に顔を向けた。しかし……。
「驚きましたわ。まさか浜辺に少女が倒れているなんて思いもしませんでしたから」
女性は微笑んでいたが、不意にいぶかるような顔をした。
ミーシャは女性を見ようとしているようだった。しかし、方向が合っていない。
彼女は控えめな声で問いかけた。
「あなた、まさか……目が見えないのですか?」
「……そう……みたいです。どうして……昨日まで見えていたのに……」
小さく答えたミーシャの声は震えていた。後半はほとんどひとり言になっていた。
また鳥の声がした。
今はきっと太陽の光が注いでいるだろうに、彼女の世界は闇に閉ざされたままだった。
突然やってきた光のない世界は恐怖以外の何物でもなかった。こんな世界でこれからずっと生きていかなくてはいけないのだろうか?
不意に触れられた感覚に、ミーシャはびくんとはね上がった。女性が肩に手を置いたらしかった。
"触れてくる手"。
それが昨夜の男の手を連想させて恐ろしかった。
全身を強張らせるミーシャに女性はなんとなく事情を察したらしく、同情に似た顔をした。
「ごめんなさい。つらい目にあってきたようですね。
しかしもう心配はいりません。私達はあなたを温かく迎え入れますわ」
「私……達……?」
女性は小さく咳払いをすると改まった声で言った。咳払いに合わせて淡い金髪が揺れたがそれはミーシャには見えなかった。
「申し遅れました。私は星女神アストラの巫女、フィリスと申します。あなたは?」
「私は……アルテミシアです……」
「そう、アルテミシアさんですね。それではアルテミシアさん。急で悪いのですけど、歩けますか?
ソフィア先生のところへ挨拶をしに行って頂きたいと思うのですが」
「……ソフィア……先生?」
どこかで聞いたことがある気がする名前。
しかし思い出そうとするのをどこかで拒む自分がいた。それに伴う闇をも掘り起こしてしまうから。
フィリスは説明を付け加えた。
「ソフィア先生は詩を嗜んでいらっしゃるお方です。たいへん博識で慈愛に満ちていらして、まさ聖女と呼ぶにふさわしい方ですわ。
あの方なら、きっとあなたの力になって下さいますよ」
「そうなんですか……。わかりました、行きます」
立ち上がろうとして、ミーシャはまごついた。どこがベッドの端なのかさえもわからない。
ミーシャは困った顔でフィリスの声がした方向を見た。
「……あの……」
「歩く補助ならして差し上げます。さぁ、私の手を」
「あ、ありがとうございます……」
フィリスの手を頼りにミーシャは立ち上がった。
「誘導には細心の注意は払いますが、足元には気をつけて下さいね」
「はい……」
ミーシャはフィリスの腕をぎゅっと掴みなおした。
石と思しき床の上を一歩一歩踏みしめる。
廊下を歩いているらしい。いつまで続くのだろう。おそるおそる進む道のりは恐ろしく長く感じた。
「着きましたよ」
待ちわびていた言葉が聞こえた。
フィリスはノックをしたいので少しの間ごめんなさい、と断るとミーシャの手を離した。
ついで、コンコンとドアを叩く音が二回聞こえた。
「ソフィア先生。フィリスです。浜辺で少女を見つけたので、介抱して連れてまいりました」
「お入りなさい」
ゆったりとした声が返ってきた。
「失礼します」
キィと鳴ったのは扉を開けた音だろうか?
戸惑っているミーシャの手をとり、フィリスが促した。
「さぁ、アルテミシアさん」
「あ、はい……」
おずおずと足を踏み入れる。
どんな部屋なのかは見当もつかなかったが、なんとなく広そうだと思った。
ふと、人が近づいてくる気配を感じた。微かに花の香りが漂ってくる。
「初めまして、ミーシャ。私はソフィアといいます。
流れ着いたそうだけれど、体調はもう良いのかしら?」
「はい。フィリスさんのおかげで……」
小さく微笑んだミーシャを、ソフィアはじっと見つめていた。
「……失礼」
ソフィアはミーシャの頬に手を当てると自分の方を向かせた。ミーシャは光の届かない瞳でソフィアを見返した。
少女の頬は薔薇色に輝いているが、その目に同じ輝きはない。闇をのぞいているような錯覚をもさせる深い悲しみの色がそこにあった。
「……目が見えていないのね?」
「…………はい」
静かに頷くミーシャ。ソフィアは優しく告げた。
「何があったかは聞かないわ。それはあなたが自分自身と向き合えるようになってからで構わない。
話したくないことはずっと話さなくてもいいの」
諭すようなソフィアの言葉に、ミーシャは小さく頷いた。
「……わかりました」
「この島で体も心もゆっくりと癒しなさい。何もない場処だけれど、水と光、それに愛は満ち足りてよ。
ここはレスボス島。サラサとエリオス、そしてカーラの聖域です」
海と太陽と美の神々の名前が連なった。それは確かに水と光、そして愛には事欠かないだろう。
ゆっくりと手を引かれた。どこかへ連れて行かれるようだ。ミーシャは大人しく従った。
誘導されるまま歩いていると不意に温かい光を感じた。日の光だ。
ソフィアに伴われミーシャは歩く。
歩を進める度にしゃりしゃりと小気味良い音がする。この感覚は砂だろうか。
しばらく歩いていたミーシャは、景色こそ見えないもののここはいい場処だと思っていた。
降り注ぐ太陽に、穏やかな風。騒がしいものはなく、鳥が自由に歌っている。楽園を体現したかのようだ。
「貴方が見てきたもの、それもこの世の真実。不条理ばかり訪れる嫌な現実に目を背けたくなることもあるでしょう。
されど世界はそれだけではないのよ。
ねぇ、ミーシャ。――宜しくて?」
ソフィアは口の端を上げた。ミーシャも、声音から微笑んでいることが容易に想像できた。
最愛の家族と引き離され、恐ろしい目に遭ったのも現実。けれど、この楽園のような世界もまた現実なのだ。
聖女はミーシャの手を自身の手で包み込むと、言い含めるように告げた。
「辛いし痛いし酷いし嫌だと泣き喚いてもみても、運命の白き糸を人間は紡げない。
怖れず揺るがず妬まず恨まず誰よりも強かに美しく世に咲き誇る女になりなさい」
運命の白き糸。女神ミラが回す運命の歯車。
人は運命を操れない。やってくる不幸に抗う術もない。
選べるのは訪れる運命を自分がどう受け止めるか、ただそれだけなのだ。
「……あれ?」
ミーシャはつぶやいた。
何かが見えた。目に光は返ってきていないままだというのに。
「どうかしましたか?」
「あ、いえ……誰かが来た気がして……」
フィリスに尋ねられ、ミーシャはおずおずと言った。言葉を受けてフィリスは見渡してみるが三人の他に人の姿はない。
「慣れない環境で気が昂ぶっているのでしょう。部屋に戻りましょうか?」
「……フィリス。人でしたら来ていますよ」
静かに言ったソフィアの言葉に振り向いたフィリスは、三人のもとへ歩いてくる少女の姿を確認して目を見開いた。
現れた少女は三人に気がつくと一礼してそのまま立ち去った。
少女を見送ったフィリスは信じられないといった顔でミーシャを見た。
「驚きましたわ。アルテミシアさん、本当は見えているのではないのですか?」
「いえ……フィリスさんの顔も見えません」
「それならどうして……」
「…………」
二人のやりとりを聖女はしばらく見つめていたが、やがておもむろに口を開いた。
「ミーシャ。貴方はこれからここで暮らしなさい。貴方には色々なことを教えてあげます」
「……え……」
ミーシャは戸惑った。
エレフに会いたい、両親の下へ帰りたいという気持ちがいまだに強く残っていた。
ここにいたらそのどちらも果たせないのではないか。そう感じていた。
エレフ……。
うつむいたミーシャに、ソフィアが静かに言った。
「大事な人がいるのね?」
「え!?」
ずばりと言い当てられてミーシャはまごついた。ソフィアはゆっくり歩きながら詩の一節を詠うように言った。
「かつては私にもいたわ。誰よりも、烈しく愛した人が。けれど」
ソフィアは言葉を切った。ミーシャは遠慮がちながらも先を促した。
「けれど……?」
「今はもう遠いところへ逝ってしまったわ」
ソフィアの恋人は死んでしまったのだ。
悲しい過去を無神経に詮索してしまった。ミーシャは深い罪悪感に駆られた。
「……ごめんなさい」
うなだれたミーシャにソフィアは微笑みかけた。
「あなたが謝る必要はないの。
私が愛した人は彼岸へ行ってしまった。けれど、そのおかげで見えるようになったものがあったわ」
頬に手が当てられた。聖女の優しい手。
「愛とは褥に仕える為の奴隷ではないわ。まして子を孕む為の道具ではない。
天空を。大地を。海原を。人間を。そして己が運命を愛し、哀しみさえ糧に出来る女に成りなさい」
「自分の運命を……愛す……」
ミーシャは口の中で繰り返した。
運命がそうなっていれば自ずとエレフと再会できる。もしできなければ、それが私の運命……。
意を決すると、深く頭を垂れた。
「これから……宜しくお願いします」
「こちらこそよろしくね、ミーシャ。
それでは、フィリス。彼女にここでのしきたりを教えてあげなさい」
「かしこまりました、ソフィア先生。
さぁ、アルテミシアさん。部屋に行きますよ」
「はい。
ソフィア先生、ありがとうございました」
再び頭を下げたミーシャをソフィアは慈しむように見つめていた。
ミーシャはフィリスに手を引かれ聖女の部屋を後にした。
これからこの島での生活が始まるのだ。ミーシャの小さな胸には様々な思いが去来していた。
誰かが呼ぶ声がした気がした。少女はそれで目を覚ます。
鳥の囀り。遠くからは波の音が聞こえる。今触れている柔らかい感触は……布団?
ミーシャはゆっくりと体を起こした。
「……」
「目が覚めましたか?」
穏やかな女性の声。ミーシャは声がした方向に顔を向けた。しかし……。
「驚きましたわ。まさか浜辺に少女が倒れているなんて思いもしませんでしたから」
女性は微笑んでいたが、不意にいぶかるような顔をした。
ミーシャは女性を見ようとしているようだった。しかし、方向が合っていない。
彼女は控えめな声で問いかけた。
「あなた、まさか……目が見えないのですか?」
「……そう……みたいです。どうして……昨日まで見えていたのに……」
小さく答えたミーシャの声は震えていた。後半はほとんどひとり言になっていた。
また鳥の声がした。
今はきっと太陽の光が注いでいるだろうに、彼女の世界は闇に閉ざされたままだった。
突然やってきた光のない世界は恐怖以外の何物でもなかった。こんな世界でこれからずっと生きていかなくてはいけないのだろうか?
不意に触れられた感覚に、ミーシャはびくんとはね上がった。女性が肩に手を置いたらしかった。
"触れてくる手"。
それが昨夜の男の手を連想させて恐ろしかった。
全身を強張らせるミーシャに女性はなんとなく事情を察したらしく、同情に似た顔をした。
「ごめんなさい。つらい目にあってきたようですね。
しかしもう心配はいりません。私達はあなたを温かく迎え入れますわ」
「私……達……?」
女性は小さく咳払いをすると改まった声で言った。咳払いに合わせて淡い金髪が揺れたがそれはミーシャには見えなかった。
「申し遅れました。私は星女神アストラの巫女、フィリスと申します。あなたは?」
「私は……アルテミシアです……」
「そう、アルテミシアさんですね。それではアルテミシアさん。急で悪いのですけど、歩けますか?
ソフィア先生のところへ挨拶をしに行って頂きたいと思うのですが」
「……ソフィア……先生?」
どこかで聞いたことがある気がする名前。
しかし思い出そうとするのをどこかで拒む自分がいた。それに伴う闇をも掘り起こしてしまうから。
フィリスは説明を付け加えた。
「ソフィア先生は詩を嗜んでいらっしゃるお方です。たいへん博識で慈愛に満ちていらして、まさ聖女と呼ぶにふさわしい方ですわ。
あの方なら、きっとあなたの力になって下さいますよ」
「そうなんですか……。わかりました、行きます」
立ち上がろうとして、ミーシャはまごついた。どこがベッドの端なのかさえもわからない。
ミーシャは困った顔でフィリスの声がした方向を見た。
「……あの……」
「歩く補助ならして差し上げます。さぁ、私の手を」
「あ、ありがとうございます……」
フィリスの手を頼りにミーシャは立ち上がった。
「誘導には細心の注意は払いますが、足元には気をつけて下さいね」
「はい……」
ミーシャはフィリスの腕をぎゅっと掴みなおした。
石と思しき床の上を一歩一歩踏みしめる。
廊下を歩いているらしい。いつまで続くのだろう。おそるおそる進む道のりは恐ろしく長く感じた。
「着きましたよ」
待ちわびていた言葉が聞こえた。
フィリスはノックをしたいので少しの間ごめんなさい、と断るとミーシャの手を離した。
ついで、コンコンとドアを叩く音が二回聞こえた。
「ソフィア先生。フィリスです。浜辺で少女を見つけたので、介抱して連れてまいりました」
「お入りなさい」
ゆったりとした声が返ってきた。
「失礼します」
キィと鳴ったのは扉を開けた音だろうか?
戸惑っているミーシャの手をとり、フィリスが促した。
「さぁ、アルテミシアさん」
「あ、はい……」
おずおずと足を踏み入れる。
どんな部屋なのかは見当もつかなかったが、なんとなく広そうだと思った。
ふと、人が近づいてくる気配を感じた。微かに花の香りが漂ってくる。
「初めまして、ミーシャ。私はソフィアといいます。
流れ着いたそうだけれど、体調はもう良いのかしら?」
「はい。フィリスさんのおかげで……」
小さく微笑んだミーシャを、ソフィアはじっと見つめていた。
「……失礼」
ソフィアはミーシャの頬に手を当てると自分の方を向かせた。ミーシャは光の届かない瞳でソフィアを見返した。
少女の頬は薔薇色に輝いているが、その目に同じ輝きはない。闇をのぞいているような錯覚をもさせる深い悲しみの色がそこにあった。
「……目が見えていないのね?」
「…………はい」
静かに頷くミーシャ。ソフィアは優しく告げた。
「何があったかは聞かないわ。それはあなたが自分自身と向き合えるようになってからで構わない。
話したくないことはずっと話さなくてもいいの」
諭すようなソフィアの言葉に、ミーシャは小さく頷いた。
「……わかりました」
「この島で体も心もゆっくりと癒しなさい。何もない場処だけれど、水と光、それに愛は満ち足りてよ。
ここはレスボス島。サラサとエリオス、そしてカーラの聖域です」
海と太陽と美の神々の名前が連なった。それは確かに水と光、そして愛には事欠かないだろう。
ゆっくりと手を引かれた。どこかへ連れて行かれるようだ。ミーシャは大人しく従った。
誘導されるまま歩いていると不意に温かい光を感じた。日の光だ。
ソフィアに伴われミーシャは歩く。
歩を進める度にしゃりしゃりと小気味良い音がする。この感覚は砂だろうか。
しばらく歩いていたミーシャは、景色こそ見えないもののここはいい場処だと思っていた。
降り注ぐ太陽に、穏やかな風。騒がしいものはなく、鳥が自由に歌っている。楽園を体現したかのようだ。
「貴方が見てきたもの、それもこの世の真実。不条理ばかり訪れる嫌な現実に目を背けたくなることもあるでしょう。
されど世界はそれだけではないのよ。
ねぇ、ミーシャ。――宜しくて?」
ソフィアは口の端を上げた。ミーシャも、声音から微笑んでいることが容易に想像できた。
最愛の家族と引き離され、恐ろしい目に遭ったのも現実。けれど、この楽園のような世界もまた現実なのだ。
聖女はミーシャの手を自身の手で包み込むと、言い含めるように告げた。
「辛いし痛いし酷いし嫌だと泣き喚いてもみても、運命の白き糸を人間は紡げない。
怖れず揺るがず妬まず恨まず誰よりも強かに美しく世に咲き誇る女になりなさい」
運命の白き糸。女神ミラが回す運命の歯車。
人は運命を操れない。やってくる不幸に抗う術もない。
選べるのは訪れる運命を自分がどう受け止めるか、ただそれだけなのだ。
「……あれ?」
ミーシャはつぶやいた。
何かが見えた。目に光は返ってきていないままだというのに。
「どうかしましたか?」
「あ、いえ……誰かが来た気がして……」
フィリスに尋ねられ、ミーシャはおずおずと言った。言葉を受けてフィリスは見渡してみるが三人の他に人の姿はない。
「慣れない環境で気が昂ぶっているのでしょう。部屋に戻りましょうか?」
「……フィリス。人でしたら来ていますよ」
静かに言ったソフィアの言葉に振り向いたフィリスは、三人のもとへ歩いてくる少女の姿を確認して目を見開いた。
現れた少女は三人に気がつくと一礼してそのまま立ち去った。
少女を見送ったフィリスは信じられないといった顔でミーシャを見た。
「驚きましたわ。アルテミシアさん、本当は見えているのではないのですか?」
「いえ……フィリスさんの顔も見えません」
「それならどうして……」
「…………」
二人のやりとりを聖女はしばらく見つめていたが、やがておもむろに口を開いた。
「ミーシャ。貴方はこれからここで暮らしなさい。貴方には色々なことを教えてあげます」
「……え……」
ミーシャは戸惑った。
エレフに会いたい、両親の下へ帰りたいという気持ちがいまだに強く残っていた。
ここにいたらそのどちらも果たせないのではないか。そう感じていた。
エレフ……。
うつむいたミーシャに、ソフィアが静かに言った。
「大事な人がいるのね?」
「え!?」
ずばりと言い当てられてミーシャはまごついた。ソフィアはゆっくり歩きながら詩の一節を詠うように言った。
「かつては私にもいたわ。誰よりも、烈しく愛した人が。けれど」
ソフィアは言葉を切った。ミーシャは遠慮がちながらも先を促した。
「けれど……?」
「今はもう遠いところへ逝ってしまったわ」
ソフィアの恋人は死んでしまったのだ。
悲しい過去を無神経に詮索してしまった。ミーシャは深い罪悪感に駆られた。
「……ごめんなさい」
うなだれたミーシャにソフィアは微笑みかけた。
「あなたが謝る必要はないの。
私が愛した人は彼岸へ行ってしまった。けれど、そのおかげで見えるようになったものがあったわ」
頬に手が当てられた。聖女の優しい手。
「愛とは褥に仕える為の奴隷ではないわ。まして子を孕む為の道具ではない。
天空を。大地を。海原を。人間を。そして己が運命を愛し、哀しみさえ糧に出来る女に成りなさい」
「自分の運命を……愛す……」
ミーシャは口の中で繰り返した。
運命がそうなっていれば自ずとエレフと再会できる。もしできなければ、それが私の運命……。
意を決すると、深く頭を垂れた。
「これから……宜しくお願いします」
「こちらこそよろしくね、ミーシャ。
それでは、フィリス。彼女にここでのしきたりを教えてあげなさい」
「かしこまりました、ソフィア先生。
さぁ、アルテミシアさん。部屋に行きますよ」
「はい。
ソフィア先生、ありがとうございました」
再び頭を下げたミーシャをソフィアは慈しむように見つめていた。
ミーシャはフィリスに手を引かれ聖女の部屋を後にした。
これからこの島での生活が始まるのだ。ミーシャの小さな胸には様々な思いが去来していた。
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ゲーマー猫好きひっきー体質。これはひどい。
普段自分の趣味を語らないんですが、
ネット上でくらいはっちゃけちまえ
と思いブログ開設。
TRPGリプレイについてとか
サンホラについてとか語ったり
時々愚痴も入る。人間だもの。
あ、カウンターは自作です。
普段自分の趣味を語らないんですが、
ネット上でくらいはっちゃけちまえ
と思いブログ開設。
TRPGリプレイについてとか
サンホラについてとか語ったり
時々愚痴も入る。人間だもの。
あ、カウンターは自作です。