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感想を語ったり普通に日記だったりするブログ。時々愚痴も出る。 語るのは主にTRPGリプレイものとサンホラと自サイト関連の話。
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遥か地平線の彼方へ前編。前後編にするほど長い話にはならないはずですが作者の気力の問題です(こら)
エレフとミロスの珍道中。厳密に双子目線を貫くなら冒頭の男とミロスのやりとりはカット、意識を取り戻すあたりから始めるべきですかねぇ。うーん……。
奴隷に後ろめたさを覚える人もいてほしいなぁと思い出した男たち。
次はもちろん遥か~後編。読み物化にあたってオリジナルでつけた伏線…というほどのものでもないですが、設定をちょっと拾うことにします。
ところで、少年が青年になるほどの時間エレフは旅をしていたんでしょうか。長いよ! すぐにレスボスに行けばよかったのに!
とりあえず自力で探そうとしてみる→数年経過→やっぱり見つからない…と意気消沈→忘れた頃にミロスの言葉を思い出す→レスボスへ。
とかそんな流れなんでしょうか。だからすぐレスボスへいk(ry

+ + + + + + + + + +
 エレフはミーシャとは別の海岸線に打ち上げられていた。
 いまだ意識が戻らないエレフの周りを数人の男達が取り囲んでいた。軽装であることから地元の者だと想像できる。
 男の一人がエレフを見ながら首をかしげた。
「見ない顔の少年だが、いったいなんなんだ?」
「昨日の嵐で船が難破したんじゃないか? 昨夜の嵐はすごかったからなぁ」
 口々にすごい嵐だったと言い合う男達。そこで男の一人が居並ぶ顔をぐるりと見回した。
「それで、この子はどうする? 家族はいないみたいだが……誰か引き取れるか?」
「う、うちは無理だぜ! この間二人目が生まれたばかりなんだ。さらに引き取る余裕なんてねぇよ」
「俺も難しいな」
 居並ぶ男達は誰一人として引き取り手の名乗りをあげようとしない。
 最初に尋ねた男はバツが悪そうな顔をしながらもその言葉を口にした。
「じゃあ……可哀相だが商人に売っちまうか」
「仕方ないよな、引き取れないんだから」
 賛同の声が上がる。方針が固まりかけた時、会話の輪に加わる男が一人増えた。
「のぅ、おぬし達……。ワシは目が見えないんじゃが、何をしておるのかのう?」
 声に振り向くと、杖に寄りかかるようにして老人が立っていた。見たことがない老人だ。蓄えた白髭を三つに編んでいる。
 男の一人がやれやれといった様子ながらも律儀に説明をした。
「しょうがないじいさんだな。
少年が流れ着いたんだよ。これからどうするかは今話し合っているところだ。このままだと奴隷行きだけどな」
「少年……?」
 老人がつぶやくとしばらく口の中で何事がもごもごとつやき、おもむろに声を張り上げた。
「……そりゃあ多分わしの弟子じゃあ」
「はあ?」
「なんであんたの弟子が漂着するんだよ」
 揃って眉をひそめる男衆に老人はしみじみと言った。
「昨日わしが魚が食いたいから潜ってとってこいと言いつけたせいじゃろうなぁ。あの嵐の中本当にやるとは思わなかったんじゃが……」
「ひでぇなじいさん」
「ほっほっほっほ……」
「まぁいいや。そんなじいさんの弟子でも奴隷になるよりはマシってもんだろ。責任持って預かってくれよ、じいさん」
 奴隷として売るには咎める心があったのか、男達はほっとした様子だった。
 問題は解決したと判断した彼らは思い思いの方向に散っていた。海岸線に残されたのは少年と老人が一人ずつ。
「……う」
 まるで見計らったようにエレフの意識が戻った。
「ミーシャ!?」
 がばっとはね起きるなり、波に呑まれた妹の姿を探した。
 しかし延々と続く砂地のどこにも最愛の少女の姿はなかった。
「ミーシャ? ワシの名前はミロスなんじゃがのぅ」
「は?」
 降ってきたとぼけた発言にエレフは露骨に顔をしかめた。
 声の主は髭まで真白な老人だった。双眸は閉じられ、杖を支えに立っている。これでまさか旅をしてるとか言わないだろうな、とエレフは思った。
 不機嫌を隠そうともせず、エレフはつっけんどんに尋ねた。
「なんだよジジイ。俺に何か用か?」
「これ、少年。師匠にそんな口をきくもんじゃないぞ」
「はぁ? いつジジイが俺の師匠になったんだよ」
「今さっきじゃ」
「なんでだ!?」
 エレフ、渾身のつっこみであった。それに対しミロスは涼しげに笑った。
「ほっほっほ、気にすることはないじゃろう。ワシの弟子になったところで減るものもなかろう」
「そりゃそうだけどよ……」
「ところで少年。少年はこれからどこへ行くつもりかの?」
 老人は本当にこちらの話を聞いているのかと疑いたくなるほど唐突に話題をふってきた。
 しかしミロスの問いにエレフは表情を引き締めた。
「……一度家に帰る。両親が気になるし、ミーシャも家に向かっているかもしれない」
 また離れ離れになってしまった。ミーシャがどこに流されたのか、見当もつかない。
 でもミーシャは「家に帰りたい」と言っていた。なら、我が家を目指せばミーシャにも合流できる可能性は高い。
 エレフの言葉にミロスは少し考え込む素振りを見せた。
「ふむ、家か。……それはどっちの方向じゃ?」
「アルカディオだよ。雷神の領域の」
 アルカディオと聞いて老人の表情が明るくなった。
「ほうほう! ワシの目的地に近そうじゃな。これは運命じゃよ、少年。ワシと共に行こうではないか」
「なんでわざわざジジイと一緒に行かないといけねーんだよ」
「さて、アルカディオはこっちの方角で良かったかのぅ」
「おい、ジジイ! 話の途中で勝手に行くなよ!?」
 よろよろと歩き出した老人を慌てて追いかけるエレフ。なしくずしに二人の珍道中が始まった。

 抜けるような青空の下、ちぐはぐな旅人が二人、のろのろと歩を進めていた。
「おせーぞジジイ、置いてくぞ」
「ほっほっほっほ」
 不機嫌そうなエレフの声にも老人は涼しげに笑うだけだった。
 老体に加えて盲目というハンデを負っているのだ。杖を頼りに歩くミロスはお世辞にも早いとはいえなかった。いや、はっきり言って遅い。
 エレフはイライラした様子ではあったが、ミロスを置いていくことはしなかった。……本格的に嫌気がさせばいつかはそうするかもしれないが。
 道端で拾った長い枝を手持ち無沙汰に振り回す。僅かに残された一葉が動きに合わせて揺れている。
「言の葉を操り森羅万象を詠う」
 暗誦詩人がおもむろに詩を口ずさみだした。それはもはやいつものことなのか、エレフは特につっこまない。
 それどころか上の空の様子で老人の言葉を聞き流していた。
「詩とはそもそも神の御業じゃ。
エレフ、創世の三楽神を知っておるか」
 問いかけに気付いたがエレフは答えない。知らないから答えられないことを、たぶんミロスはわかっている。愉快そうに笑ったのがその証拠だろう。
「ほっほっほっほ……リンスモス、メロス、ハルモニアの三神じゃ」
「そんなに一度に言われても覚えらんねーよ」
「ほっほっほっほっほ」
 不機嫌に毒づいた言葉もミロスは笑って真に受けない。再び詩を詠いだした。
「万物の創造主たる母なる者……リスモスはミラ、メロスはモイラと呼んだそうじゃ。
前者はパイロン、後者はアルタラーイコンと呼ばれ、それこそが言の葉の起こりと言われ――ごほっ、ごほっ……」
 嫌な感じがする咳き込み方に、さすがに心配になったエレフは駆け寄って顔を覗き込んだ。
「大丈夫かい爺さん?」
「ああ……」
 頷いた老人の顔は蒼白だった。エレフはこれ以上は無理だと判断した。
「今日はこのあたりで休もうか」
「はぁ……ほっほっほ……」
 なんでもないとアピールしたいのか、いつものように笑おうとしたミロスの力ない笑い声が虚しかった。
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ゲーマー猫好きひっきー体質。これはひどい。

普段自分の趣味を語らないんですが、

ネット上でくらいはっちゃけちまえ

と思いブログ開設。

TRPGリプレイについてとか

サンホラについてとか語ったり

時々愚痴も入る。人間だもの。

あ、カウンターは自作です。
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