『紫陽花』
しとしとと雨が降る
僕は降られるがまま うずくまるようにして道端に座っていた
白い傘が揺れる
どうしたの?
傘の中から現れた顔が聞いてくる
そのままじゃ雨に濡れるわ この傘を貸しましょうか?
僕はゆっくりと首を振った
白い傘は何処かへ消えた
黒い傘が揺れる
どうしたんだい?
傘の中から声が問いかけてくる
家に帰れないのかい? 僕が送ってあげようか?
僕はゆっくりと首を振った
黒い傘も何処かへ消えた
しとしとと雨が降り続く
梅雨なんか 嫌いだ
意味の無い雨なんて無いと彼女は言った
その雨がいわば彼女を奪い去った
梅雨なんか 嫌いだ
また視界が遮られた
のろのろと顔をあげると 人形のような少女が立っていた
信じられなかった
川に飛び込んだ彼女と瓜二つの顔がそこにあった
どうしたの?
左頬に何かの模様を刻んだ少女が言う
あなたは何かを悔いているの? それとも恨んでいるの?
悔いている
あぁ そうだ
子どもを助けようと飛び込んだ君
僕は何もできなかった それを僕は悔やんでいる
恨んでいる
あぁ それもそうだ
危険を顧みずに命を救いにいった君
その君を奪い去った雨 それを僕は恨んでいる
梅雨は嫌い?
再び少女が問いかける
僕はゆっくり頷いた
少女は少しの間を置いて口を開いた
でも 梅雨がなければわたしは生きていけないわ
わたし?
僕の疑問に答えるように 少女は僕の後ろの何かを指した
振り向いてみると そこには雨で揺れる紫陽花の花
君は紫陽花の化身なのか?
振り向きざまの問いかけに答えはなかった
少女はもういなかったから
意味の無い雨なんて 無いんだよ
彼女の言葉がよみがえる
雨は彼女の命を奪い去った
同時に雨は新しい彼女を潤す術となっている
もうすぐ
もうすぐこの短い季節が終わる
今年もまた 暑くなるのだろうか…
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普段自分の趣味を語らないんですが、
ネット上でくらいはっちゃけちまえ
と思いブログ開設。
TRPGリプレイについてとか
サンホラについてとか語ったり
時々愚痴も入る。人間だもの。
あ、カウンターは自作です。