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感想を語ったり普通に日記だったりするブログ。時々愚痴も出る。 語るのは主にTRPGリプレイものとサンホラと自サイト関連の話。
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SSがショートストーリーなのかサイドストーリーなのか知りませんけど。
まあ詩に近い(痛いよそれ)ものをつらつらと。
自サイトの話のちょっと伏線。ある意味壮絶なネタバレ。

すっかり使うようになった「つづきをよむ」から。

+ + + + + + + + + +
小さな村に一人の旅人がやってきました。
明るく人懐っこい性格だったため、彼はすぐに村の人々と打ち解けました。
ある日、その村に住む一人の女性が彼にこう言いました。

「私の一人息子は生まれつき病弱で、部屋から出ることもままなりません。
それでも外を見たいと願う息子のために、外の世界の話をしてあげてくれませんか?」

旅人はそれを聞き、快く承諾しました。

旅人は病弱の息子がいる家に行き、彼の布団の傍らで山より大きな巨人達が住む村に行った時の話をしました。
青白い顔をしていた少年は、その話に目を輝かせて聞き入っていました。
そして話が終わるととても残念そうにしていました。
少年は少しためらってから、おずおずと言いました。

「また明日も来て、お話聞かせて欲しいな……」

旅人が微笑んで頷くと、少年ははにかみながらもうれしそうに笑いました。

次の日も旅人は少年のもとにやってきました。
今日の話は、海底を冒険した時の話でした。
鮫やイルカと聞いてもぴんとこない少年のために、絵を描いて教えてあげました。
ぐにゃぐにゃとして原型をとどめていないその絵に少年は笑いましたが、旅人は少し悲しそうな顔をしました。
悪いことをしたと思った少年が謝ると旅人は微笑んで続きを話して聞かせました。
また明日も来ることを約束すると、旅人は宿へ帰って行きました。

そうして月日は過ぎていきました。
旅人が来た時は赤や黄色の彩りだった町並みが、今ではすっかり寂しくなっていました。

旅人は今日も旅の話を聞かせていました。しかしどこか沈んだ表情でした。
それというのも、話を聞いている少年がつまらなさそうにしていたからでした。
鳥人の背に乗って空を飛んだ話をしても、少年はそっぽを向いていました。
今回だけなら、話が面白くなかったのかもしれません。今日は体調が良くないから機嫌が悪かっただけかもしれません。
けれど、少年のその素振りはここ数日続いていました。
何がいけないんだろうと思いながら話し終えた旅人に、少年は言いました。

「もっと面白い話はないの?」

旅人はひどく傷つきました。その日話したお話は、特に面白いだろうと思っていたものだったからです。
今の話は面白くなかったのかと尋ねると少年ははっきり答えました。

「だって、今までのと同じパターンなんだもん。
お兄さんが迷い込んだ先で最初はひどい目にあって、それから誤解がとけたら良いことがある。
いくらバリュエーションがついたからって、その流れが同じじゃ飽きもするよ」

旅人は何も言えませんでした。唇をきゅっと結ぶと、黙って立ち上がりました。
いつもと違う様子に気付いた少年は慌てて言いました。

「どうしたの? ねえ、もうすぐママがお茶を持ってくるんだよ。それまで待っててよ」

しかし旅人は暗い顔で告げました。
もう君には話してあげられない。君を満足させられる話を、僕はもう持っていないから。
今日だけでなく、今後一切来なくなるつもりだと悟った少年は叫びました。

「ずっとここにいてよ。ずっと僕にお話きかせてよ。
本当はあるんでしょう? もっともっと面白いお話が。そんないじわるしないで教えてよ」

少年は言いましたが、旅人は首を縦には振りませんでした。
懇願していた少年も終いには旅人にひどい言葉をかけるようになっていました。

「嘘つき!
どうせ本当は今まで話したような冒険なんかしてないんだろう!
何も知らない僕をだましてかげで笑っていたんだろう! 嘘つき! 嘘つき!!」

少年の言葉に旅人は、静かに口を開きました。

そんなに言うなら話してあげよう。僕のとっておきのお話を。
あるところに体の弱い少年がいた。
彼は村に立ち寄った旅人にせがんで毎日旅の話を聞いていた。
最初は楽しんでいた彼も、次第に旅人の話に飽きるようになっていた。

旅人が語るにつれて、辺りに異変が起きてきました。
風も雲も無い穏やかな日だったはずなのに、空が暗くなりました。
ひゅうひゅうと不気味な音の風が吹きつけ窓をガタガタと鳴らしました。
怖くなった少年がもういいと叫んでも旅人は止めませんでした。

ついに不満を爆発させた彼は、旅人の不興をかってしまった。
ところで少年はその旅人の正体を知らなかった。
旅人は、人間界に興味を持った魔神だった。
人間に馴染めるように愛想をかぶっていた魔神だったが、その根が善良なはずもない。

部屋の隅から黒い穴があき、そこからもやのようなものがわいて出てきました。
震えながら見ていると、そのもやはやがて手の形をとって少年の方へのびてきました。
黒い手は少年を掴むと、自分たちが出てきた穴へと少年をひきずっていきました。
悲鳴をあげる少年はもはや話など聞いていませんでしたが、旅人は話を続けました。

魔神を怒らせた少年はその魔神の手によって暗い暗い冥府の世界に連れて行かれた。
そしてその後、彼がどうなったかは誰も知らない。
愚かな愚かな少年のお話は、これでお終い。

誰もいなくなった布団に向かってそういうと、旅人は何事もなかったように部屋から出て行きました。
息子が消えたことに気付いた母親が騒いでももはや手遅れでした。
旅人は旅の空。少年は冥府の底。
母親に我が子を連れ戻す方法などありませんでした。

少年がいつまでも無垢なままでいたなら。
あるいは、怒ってひどい言葉を投げかけなければ。
こんな結末にはならなかったでしょうに……。

これを読んでいるあなたも、考えてみて下さい。
誰かの善意を当然のことだと思い込んでいませんか?
もう一度振り返ってよく見てみて下さい。
でないと、あの少年のようになるかもしれませんよ……。

*  *

そこまで読んだ少年は、本を閉じた。
「……なんだよ、これ。珍しく親父が本をくれると思ったら、教訓話じゃないか」
ぼやきながら本の背を指でなぞる。都会に行ってきた父親が買ってよこした本。
少し洒落た表紙にひかれて読んだものの、結局は読者に教訓をのこす本だった。彼が嫌いなタイプだ。
期待していただけに腹立たしい気分だった。黒ずんだランプの明かりの中で読んだせいか目も疲れていた。
「馬鹿らしい。明日も早いんだからとっとと寝よう」
ランプを消すと黒髪の少年は布団に潜り込む。
「あーぁ……あんな本読んだから今夜の夢見悪そうだな。
夢に影響出やすいの知らないからってさ……」
つぶやきながら少年はゆっくりと眠りの世界へ落ちていった。

細く差し込む月明かりに照らされた、一冊の本。
その本は『 Innocence foolish 』と銘打たれていた。
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のみち
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パソコンいじり
自己紹介:
ゲーマー猫好きひっきー体質。これはひどい。

普段自分の趣味を語らないんですが、

ネット上でくらいはっちゃけちまえ

と思いブログ開設。

TRPGリプレイについてとか

サンホラについてとか語ったり

時々愚痴も入る。人間だもの。

あ、カウンターは自作です。
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