ちょっと断片

ロマーンが微妙に再燃しているのみちであります。
もしょもしょと書いてます。かなり断片。むしろ走り書きのメモ。
時間と気分があえば本格的に書いたものを後日ＵＰすると思うので、見なくていいと思う。……じゃあなんの為に書いてるんだ（笑）

『冬の名の男』

　オルタンシアが声をかける。
「ムッシュ？　何を考えているのですか？」

「僕の名前が皮肉なものだな、と思ってね」
「皮肉……ですか？」

「全ての命が芽生えるのは春だ。ならば僕は、春に生まれるのかもしれない。
けれど、春になるには冬が終わらなければならない。そうしたら、冬である僕は死んでいることになる」
「……ムッシュ……それは……」
「うん、わかってる。名前に囚われる必要なんてないことは、わかっているんだ」

「遠いな……春は」


＊　＊　＊

『生まれてくる朝、そして――』

「ありがとう、二人とも」
　イヴェールは穏やかに微笑んでいる。姫君達もまた微笑み返した。
「おめでとう、ムッシュ」
「やっと生まれられるのね、ムッシュ」
「うん。君たちのおかげだよ。本当にありがとう」
　もう一度感謝の言葉を口にすると、イヴェールは二人の小さな肩を抱き寄せた。
「君たちには本当に感謝している。僕の為に、ずっと世界を廻り続けてくれたのだから……」
「気になんてしてないですよ、ムッシュ」
「そうよムッシュ。私達はその為に命を得た人形なんだから」

　イヴェールが扉を開いた。その向こうには光輝く世界が横たわっていた。

　――バタン

　重い音を立てて扉は閉じられた。
「……」
「……」
　主が出て行った扉を、双児はじっと見つめていた。
　どちらともなく、お互いの手を重ねる二人。まるで、何かに備えるかのように。

　――"ありがとう"

　ありがとう。貴方と共に過ごした日々はとても楽しかった。
　ありがとう。貴方の為に働けることがとても嬉しかった。

　ふつっと。人形の糸が切れるように……。
　二人の体が同時に傾いだ。

　――"さようなら"

　私達は貴方の為に命を吹き込まれた人形〈ドール〉。
　役目を終えた今、元の人形へと戻る。

　トサっと軽い音と共に、二つの人形は地に伏せた。
　先ほどまで生きていた人形は、もはやぴくりとも動かない。

　生まれてくる朝
　死んで行く夜

　しあわせにおなりなさい。
　――どうか、私達の分まで。