なんというか、当初考えていた話運びからだいぶ変わってきています。密航するはずだったんだけどなぁ。
でも少なくとも、三人が逃げて既に風神が怒っている状況なわけで。雲行き怪しくてしかも夜だったら船も出港しないだろと思い直しこんなルートに。
そもそも当時の船ってどうだったんでしょうね。昔は海を畏れていた可能性もありそうな。
こんないきばたで大丈夫なんだろうか(何を今さら)
展開がめちゃくちゃなのはつっこんではいけない。それこそ今さらなんだぜ!
オリオンとエレフはしょっちゅう口論していればいいよ。エレフがちょっとバカでオリオンの方が上手だといいよ。
でもちょっと脱走後の会話をだらだら引きずりすぎたかなー。どうなんだろう。
次はレスボスかー。正直読み物にするにはどうでもいい場面だなー(こら)
というかオリオン編書きたい。もう9割オリジナルの人物(弓の師匠)を絡ませる構図が脳内でできあがってます。
加筆修正してサイトにあげる時はこっちでは描いていない別視点の物語も平行して載せる予定だからそこでやろう。ぜひともやろう。
オリオンしゃべらせるの楽しい。エレフ視点ではもう出番ないけど。
確かにオリオンの言う通り、部屋のそばに護衛の姿はなかった。拍子抜けするほど簡単に侵入は成功した。
外からの異民族にばかり目がいって中が疎かなのかもしれない。無用心だと思うが、神官は警戒していないのだろうか。
考えにつられて変態の顔を思い出し、エレフは苦い顔をした。
奴は今何をしているのだろう。
自然とエレフの耳は澄まされていった。
「いやぁっ!」
部屋の中からかすかな声がした。おそらく少女の声だ。
中に人がいたとしても先刻ちらりと見た女だろうと思っていたエレフは驚いた。同時に再び怒りがわいてきた。
あの変態神官……今度は女の子に手を出してやがるのか!
エレフは足音をしのばせて部屋に侵入した。オリオンとの待ち合わせがちらりと頭をかすめたが、忘れることにした。
神官と少女は奥の方にいるのだろう。入り口からは姿が見えなかった。
エレフは部屋を見回した。
改めて見れば、神に仕える身でありながら無駄に豪華な部屋だ。まぁ、変な性癖がある時点でまっとうな神官と考えない方がいいようにも思えるが。
並べ立てられた装飾品の中に凝った細工が施された短剣があった。これがオリオンの言っていたものだろう。
見映えが先行して強度に不安がある印象だが、素手よりはよほどましだ。エレフは短剣を手に取った。
「逃がさないよ、子猫ちゃん」
背筋がぞわりとする、いやらしい声がした。
あっちに奴がいる……!
エレフは声がする方へそろそろと近づいた。
顔まではよく見えないが、動く影が大小一つずつ目に入った。
明り取りの窓はあっても月が隠れているため、光源といえば部屋の隅で燃えるランプ程度なものだった。
追い詰められた少女が目に涙を浮かべているのか、薄闇の中で何かが煌いていた。
「やだぁ……!」
恐怖の声をあげる少女に、神官はにじり寄った。
「いひ……いーっひっひひひ! ワタシの渇きを潤しておくれぇ……!」
我慢の限界だった。
変態神官が少女に迫った時、エレフは短剣を握って走りこんだ。
「やああああぁぁぁっ!!」
「ぎゃああぁッ!!」
勢いをつけて突き刺した短剣は変態神官の背中に深く刺さった。嫌な感触が手に伝わる。神官は大きな悲鳴をあげて倒れた。
神官を無視して少女の元へ駆け寄るエレフ。縮こまって震える少女に目の高さをあわせてしゃがみこむと問いかけた。
「大丈夫かい、君?」
少女の目をのぞきこんだ瞬間胸の中に溢れた懐かしい感覚。まっすぐに見返してくるその瞳は、エレフと同じ色をしていた。
「……エレフ?」
少女が口にしたのは自分の名前。
不意に射し込んできた月の光が二人の姿をさらけ出した。白地に赤紫色の筋が入った髪、紫色の瞳。
それはまごうことなき片割れの姿。
「ミーシャ!?」
エレフは驚き、笑顔を浮かべ、また険しい顔へと目まぐるしく変わった。
再会を喜ぼうとしたが、後方で助けを求めている神官の声で我に返ったのだ。
「追っ手が来る前に逃げよう、ミーシャ!」
「うん!」
手を差し出してミーシャを立たせると二人は部屋から飛び出した。
一度は離れ離れになった二つの手。それを今度こそ繋ぎ通そう。今度こそ、絶対君を守るから。
「待てぇい!」
ずしずしと走ってくる巨体の追手。エレフは突然立ち止まり振り向いた。
反応が遅れた追手の鳩尾に体重を乗せたエレフの渾身の一撃が入った。追手は白目を向いて倒れた。
一撃を加えたエレフは男が腰に差していた剣を奪うとすぐにまた駆け出した。左手はしっかりとミーシャの手をつかんでいる。
騒ぎは既に広まっている以上、じっとしていたら追手が増えるだけなのは目に見えていた。現に角からまた追手が現れた。
走りながらエレフはちらりと振り向いた。
追手の中にも黒い影を負う者がいた。
同じ影が、自分の背にもついているのだろうか……。
エレフは頭を振って嫌な考えを追い払った。
冗談じゃない。俺はミーシャと一緒に自由になるんだ!
がむしゃらに走り続けた二人だったが、エレフが我に返って顔色を変えた。
道がわからない。
城壁の出口はどこにあるのだろう。エレフはそれを知らずに走っていたことに今になって気付いた。
しかしそれを顔に出さないように努めた。ミーシャまで不安にさせたくなかった。
そうして考え事をしていたのが仇になったのだろうか。
エレフの意識の外から近づいてきた男がミーシャに届こうとしていた。二人ともそのことに気付いていない。
追手の男はにやりと笑うと一気に距離を詰め、少女に手をのばし――
びくんと痙攣して倒れた。男が地に伏した音で二人はその男の存在に気付いた。男の頭には矢が刺さっていた。
状況が飲み込めずに困惑していると横手から声がかかった。
「捕まるんじゃねぇぞ、エレフ!」
思わぬ援軍の登場にエレフは口元に笑みを浮かべた。
「お前こそな、オリオン!」
オリオンは当たり前だと言いたそうな目でにやりと笑った。
捕まればまた奴隷に逆戻り。いや、逃亡と反逆の罪でさらし首だろう。そんなのはまっぴらだ。
「こっちだ!」
オリオンの先導に従って二人は走った。
先頭を行くオリオンは前を向いたまま怒鳴った。
「それで、どういうことだよエレフ! 俺が駆けつける前に騒ぎになるなんて聞いてねーぞ!」
「うるさい! 色々事情ってのがあるんだよ!」
「わけわかんねー!」
追われる身だというのにぎゃーぎゃーと騒ぎながら風の都を駆け抜ける三人。厳密に言えば騒いでいるのは二人だが。
ミーシャはしゃべる余裕もないのか、疲れた表情でなんとか二人についてきているといった様子だった。
「待て待てぇ!」
「たぁ!」
「ぐあっ!」
もはや何人目かもわからない男をなぎ倒す。しかし振り向いてうんざりした。追手の数は一向に減った気がしない。
エレフは息を乱したまま叫んだ。
「ちくしょう! このままじゃ逃げ切れねーぞ!」
「俺に任せとけって!」
自信満々にオリオンが言う。
矢を番えると、キリキリと引き絞った。標的は迫ってくる男達。
オリオンが吼えた。
「必殺!『弓がしなり弾けた焔、夜空を凍らせて』射ち!」
オリオンが放った色んな物理法則を無視した矢の雨が男達に降り注いだ。足を、腕を、あるいは頭を射抜かれた追手達は一様に足を止めた。
後続達も恐れをなしたのか近づいて来ようとしない。
どんなもんよ! と高々と弓を持ち上げるオリオンにエレフのつっこみがとんだ。
「技名長ぇよバカ!」
「黙らっしゃい! これぞオリオン流弓術の真髄!」
追手を一掃して気が楽になったのか、二人は軽口を叩いていた。
扉は目の前にある。自由への扉だ。
厚い城壁の境界を三人は走りぬけた。行く手を阻む者はいなかった。
風の都も今は背後に遥か遠い。
足を止めたオリオンは遠いイリオンへ意気揚々と叫んだ。
「さらばイリオン!」
「なんだよそれ」
憮然とした顔のエレフにオリオンは笑った。
「雰囲気だよ、雰囲気!」
「じゃ、さらばオリオン!」
「おいっ!」
聞き捨てならない台詞に思わずオリオンはつっこんだ。エレフはにやりと笑う。
「冗談だって、冗談」
「本気だな? 今、本気だったろ? おー、いい度胸だなエレフ!」
「け、喧嘩はだめだよ!」
ミーシャが間に入った。オリオンは素直に、エレフはしぶしぶと引いた。
オリオンはころりと表情を変え、喜色を浮かべてミーシャに話しかけた。
「そうだよ! まだ君の名前聞いてない! なんて言うの?」
「私はエレフの双子の妹のアルテミシア。みんなからはミーシャと呼ばれています。
あの……さっきは逃げるのを手伝ってくれてどうもありがとうございました」
ぺこりと頭を下げるミーシャにオリオンはにこにこしっぱなしだった。
「礼なんていらないって、お互い様だし! それと敬語はなしにしようぜ。なんか他人行儀で寂しいからさ。
あ、俺も自己紹介しとくよ。俺はオリオン! 特技は弓! 将来は世界中にその名を轟かせる名手になる予定!」
「さっきも見ていたけど、すごかったよ」
ミーシャにすごいと言われてオリオンはますます調子づいた。
「だろだろ!? 今後もオリオン様の活躍に乞うご期待!」
「調子に乗るなよバカ!」
しばらく置き去りにされていたエレフがイライラした様子で割って入った。しかしオリオンはにやにやとエレフを見た。
「お? お? 俺とミーシャの仲がいいからってひがんでんのかなー、エレフちゃん?」
「うるせえバカ! ちゃんって言うな! そのしっぽ引っこ抜くぞ!」
「おう、やってみろよ」
売り言葉に買い言葉。オリオンにくってかかろうとしたエレフだったが、はっとなって振り向いた。ミーシャが泣きそうな顔で二人を見ていた。
「どうして……喧嘩するの……?」
ミーシャがひっくと小さくしゃくりあげた。
「せっかく怖いところから逃げられて……やっとエレフに会えてお友達もできたと思ったのに……なんで喧嘩するの?」
涙をにじませるミーシャに二人は大慌てで弁解を試みた。
「違う! そうじゃないんだミーシャ!」
「そうそう! これはコミュニケーション! 友情の確認だから! 喧嘩じゃないから安心して!」
「本当に……?」
「本当さ! なぁエレフ!?」
「おう! だから泣き止めよ、ミーシャ。なっ!?」
「……うん……」
小さく頷くと、ようやくミーシャが泣き止んだ。ほっと胸をなでおろす少年二人。
気まずそうに頬をかきながらオリオンは口を開いた。
「あー……それで、これからどうする?」
落ち着きを取り戻したエレフが答えた。
「そうだな。とりあえずどこか近くの街に行きたいな」
「……家には帰れないの?」
不安そうなミーシャにエレフは言葉に詰まった。オリオンが逆に質問をした。
「家ってどの辺り?」
「アルカディオ……」
「アルカディオってことは……国境越えか? アナトリアの領土内じゃないよな?」
こくりと頷くミーシャ。それを見たオリオンは腕を組んで考え始めた。
主導権を奪われまいとエレフはミーシャを励ました。
「心配するなよミーシャ。絶対帰れるから」
「うん……」
「じゃ、ひとまず二人の家を目指すか」
あっけらかんと言ったオリオンに、エレフが目ざとくつっこんだ。
「って待てよ! お前も一緒に来んのか!?」
「なんだよ、別にいいだろ? 旅は道連れって言うじゃねーか」
「いらねー! お前はお呼びじゃねぇよバカ!」
「冷ってーなぁ! 一緒に行ってもいいだろ! どうせ俺は帰る場所なんかないんだからさ!」
「……は?」
オリオンの言葉を理解するまでに時間がかかった。
帰る場所がない?
まじまじと見てくる二人に、あちゃーという顔を浮かべるオリオン。ばつが悪そうに告白した。
「……二人がどういう経緯であそこに来たか知らねーけどさ。俺は親に売られてきたんだ。今さらのこのこ帰ったって受け入れられねーよ」
「…………」
両親の愛情を一身に受けて育った二人に、オリオンの気持ちを完全に理解することはできなかった。
しかし想像するだけでもその苦しみの一片が伺えた。
重くなった空気を取り払おうと笑顔を浮かべてオリオンが言った。
「ってなわけだから、俺も一緒に行かせてもらうぜ。どうせ他に行くあてもないし、エレフは頼りないからなー!」
「てめ……! いい気になるんじゃねぇよ!」
「ほらほら、さっさと行こうぜ。家ってのは遠いんだろ? せめてどこか街にはついておきたいからな。雲行きも悪いしさ」
立ち上がったオリオンはちゃっかりミーシャに手を差し出していた。差し出された手をつかんでミーシャが立ち上がる様を、面白くなさそうにエレフが見ていた。
先刻まで満月が輝いていた空は不穏な空気を纏いつつあった。黒く厚く雲が立ち込めた空はいつ泣き出してもおかしくなかった。
一行は海岸線沿いを進むことにした。うまく行けばアルカディオ方面に向かう船があり、乗せてもらえるかもしれない。
励ましあいながら疲れた体を引きずって歩く子どもたち。
そんな小さな三人を嘲笑うのは嵐女神、シエラ……。
海岸線から吹き付ける強い風。次第に高さを増してゆく波。
もう少し海岸線から離れよう、今日はもうこの辺りで足を止めようと彼らが議論していた丁度その時。
全ては一瞬のことだった。
一際高い波が三人を飲みこんだ。波が引いた時、そこには誰もいなかった。
荒々しく割れる波と猛り狂う風の音は妹の名を叫ぶ少年の声すらもかき消した。その風の音は風の神が高笑いをする声だったのか。
神は――神域を侵した者を決して赦さない。
12 | 2025/01 | 02 |
S | M | T | W | T | F | S |
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26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
普段自分の趣味を語らないんですが、
ネット上でくらいはっちゃけちまえ
と思いブログ開設。
TRPGリプレイについてとか
サンホラについてとか語ったり
時々愚痴も入る。人間だもの。
あ、カウンターは自作です。