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感想を語ったり普通に日記だったりするブログ。時々愚痴も出る。 語るのは主にTRPGリプレイものとサンホラと自サイト関連の話。
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自サイトでいう読み物にあたるものをぶっつけ本番で書いてみる。
頭の中でうだうだ考えていただけで書くのはぶっつけだからひどいことになる予感バリバリだけど間をあけると書けなくなる可能性の方が高いから一気に書くのさー。

仮タイトルは「君に咲くリリー」
いつぞや書きたいとあげ連ねた話のうちの、異貌の少年の話。
それなりに長くなるんじゃなかろうか。

+ + + + + + + + + +
『君に咲くリリー』

僕はひとり。

父が誰かは知らない。
母は生まれてきた僕の姿を見て、捨てた。
だから僕は生まれてすぐに自分の力で生きなければいけなかった。
それができるだけの能力があったからこそ、捨てられたともいえるけど。
ともあれ僕はひとりだ。
人は誰も寄ってこない。
仕方のないことだ。だって、僕の目を見れば僕が異端児であることはすぐわかる。
黄金色の右目と、黒く濁った白目に赤い眼球が浮かぶ左目。
特に左目を見た人間は口々に僕を罵った。
「汚らわしい悪魔め」と。
その言葉がどれほど僕を傷つけているか、人々は知らないんだ。
僕だって人間だ。ヒトとは違う目をもっていても、僕は人間なんだ。
本当はみんなと一緒にいたい。同じように暮らして、同じように笑いあいたい。
でも現実はそうはいかないことを僕は知っている。
人目を逃れるようにひっそりと暮らし、ひとたび見つかれば恐れられ他の街へ行くことを余儀なくされる。

そうするうちに僕が抱いた、たった一つの願い。
誰でもいいから。だから、誰か僕を受け入れて。
薄暗い裏路地でうずくまりながら、僕は願い続けた。

「こーんーにーちーはっ! わたし、リリー!」
目の前で少女が笑っている。
僕はとっさに振り向いた。後ろには誰もいない。
少女はすねたように唇を尖らせた。
「あなたに言ってるのー。じゃあ、もっかい言うね。こんにちは!」
「…………こんにちは」
「うん、こんにちはっ!」
戸惑いながらも小さく言った返事に、少女は満足そうに目を細めている。
なんだろう。誰だろう。僕が怖くないのかな。
疑問が僕の中でぐるぐると回る。
「ねぇねぇ!」
また少女が口を開く。僕はとっさに身構えた。
僕の目を見て怖がらず、純粋な好奇心や興味をもった子どもは今までもいた。
そういう子どもたちの二の句はいつもこうだ。「なんでそんな目なの?」
僕はいつもその問いに答えられず、その場から逃げ出すしかなかった。
今回もそれだろうと思っていたら、少女が自分の手を突き出した。
「手をつなごう!」
「…………え?」
何を言われたのか、理解するまで少しの時間が必要だった。
手をつなぐ? 僕と? どうして?
考えてもわからないから、僕は疑問を口にした。
「手をつなぐって……どうして?」
「わたしのおっきな夢! みんながね、隣の人と手をつなぐの。世界中の人々がそれをするの。
そうしたら、みんながつながるでしょ? みんながつながるのよ! それって素敵だと思うの!」
満面の笑みと共に少女が夢を語る。
少女が言う世界を想像してみた。誰もが隣の人と手をつなぐ世界。
でも……。
想像の中の世界でも僕はひとりだった。隣にいる人々は、みんな僕を見て手をつなぐのを嫌がったから。
「……僕はその輪に入れないよ。その世界でも僕はひとりだ。誰も僕と手をつなぎたがらないから」
「じゃあわたしと手をつなごう!
わたしの右にいる人も左にいる人も、そのさらに隣の人ともうつながってるから大丈夫!
わたしだって、あなたが手をつないでくれればひとりじゃないもの!」
「……でも……」
少女の言葉を受けてもなお、僕はためらった。
だって、嫌じゃないの? 僕と手をつなぐなんて。
僕と一緒にいたら、君だってきっと他の人から嫌われる。
いつか、僕を疎ましく思うよ。お前さえいなければみんなの輪に入れたのに、って……。
「変なの」
少女が僕を見て言う。
目のことかと思ったが、少女がさしていたのは別のことだった。
「さっきあなたは「誰も自分と手をつなぎたがらないから」ひとりだって言ってたよ。
でも、わたしはもう手を差し出してる。
手をつなぎたがらないのは、あなたの方だよ?」
「あ……」
少女の指摘は的確だった。
そうだ。僕はいつだって、差し出された腕を自分から拒絶していた。
「わたしは手を出してる。
あとは、あなたが手をのばしてつかむだけだよ」
少女は笑顔で僕を見ている。
後悔しないの? 拒絶しないの?
また疑問をもたげる心の中の声を、僕は封じ込めた。
やっと望んでいた人が目の前にいるんだ。僕を受け入れてくれる人が。
ゆっくりと、僕は震える手をのばし、少女の手をつかんだ。

ピッ

何かの音と共に、一瞬で目の前の光景が変わっていた。
白い天井。その天井にのばされた、空気をつかもうとしている自分の腕。
ピッ ピッ ピッ……
規則的に響く電子音。その音は機械が知らせる自分の心音で、ここが病院の一室だろうと気付くのに時間が必要だった。
「う……うぅ……」
嗚咽が口から漏れる。
何故こんな場所にいるのかなどと、そんな疑問はどうでも良かった。
やっと出会えた、自分を受け入れてくれる少女。それが全て夢だった。
その事実が深く胸を抉っていた。希望から絶望の底へ落とされ、僕は泣いていた。
涙をぬぐうために手を動かそうとして、初めて気付いた。左手に何か温かい感触がある。
頭を右に向けると、白衣に身を包んだ女性の姿があった。ベッドにもたれかかるようにして静かに眠っている。
彼女の手が僕の左手を握っていた。もしかしたら右手も一緒に握っていたのかもしれない。
誰だろう。いや、白衣からして病院の人だろうけど。どうして僕の手を握っているんだろう。
いつものように疑問が頭の中で渦巻く。
疑問を抱いたまま女性を見ていたら、彼女が目を覚ました。
目が合ったことにうろたえる僕に彼女は微笑んだ。
「良かったわぁ。目ぇ、覚ましたんやね」
あまり聞きなれない口調だったけど、彼女の声は優しかった。
「あの……」
「心配せんでもええよ。ここは身寄りがのうて路頭に迷った子どもを預かっとる施設の一部やで。
それにしてもホンマに良かったわぁ。センセも諦め半分やったから、助かったのは儲けモンやなぁ。
ウチがついとるから安心せぇ言い続けた甲斐もあったのかもしれへんけどねぇ」
にこにこと笑いながら彼女は言う。
「何や食べたい言うんがあったら遠慮なく言ってな。できるだけ用意するでぇ」
「……いえ、特にないのでいいです」
「ほな、後でりんごでも剥いたろなぁ」
彼女はゆっくりと立ち上がると、少し申し訳なさそうな顔をした。
「悪いんやけど、ウチは他の子も見なあかんさかい、行ってくるわぁ。また後でなぁ」
そう告げて部屋から立ち去ろうとする。
何か言わないといけない。そう思ったが、踏み出す勇気が出なかった。
不意に、夢の中の少女の言葉が蘇った。
『わたしは手を出してる。あとは、あなたが手をのばしてつかむだけ』
意を決して、去り行く彼女を引き止めた。
「……あの!」
「ん? 何や?」
のんびりと微笑んで彼女は振り向いた。
何か伝えないといけないという思いばかりが先走って、肝心の伝える言葉を考えていなかった。
慌てながらもなんとか言葉を紡いだ。
「……ありがとうございました」
「礼には及ばんよぉ、ウチも好きでやってることやでぇ。でも、おおきになぁ。その言葉が嬉しいんや」
「あの……僕の……」
目を見て何も思わないんですか。
言おうとして、ためらって続かなかった。
彼女が目を覚ましたとき、確かに目が合った。少なくともその時には僕の目のことに気付いていたはずだ。
でも彼女はそのことに触れない。……何故?
言わない方がいいんじゃないか。もし口にしたら、改めて意識した彼女がおびえるかもしれない。
囁いてくる心の声をねじふせて、僕はわずかに震える声で続きを口にした。
「僕の目を見て……怖くないんですか……?」
「目?」
「だって、ほら……悪魔みたいな目をしてるじゃないですか……」
彼女がまじまじと僕の目を見ている。その沈黙の時間が怖かった。
「なんや、個性的な目ぇしとるんやねぇ」
「え……?」
微笑みまじりに言われた言葉に、僕は驚いた。
「気にしとるのかもわからへんけど、ウチは気にせぇへんで。
少し形が違うだけやて、尊ぶべき命には違いなんてあらへんもんなぁ」
「……!」
受け入れてくれた。それに、同じだと言ってくれた。忌まれ続けたこの僕を。
言葉をなくした僕に彼女はゆったりと告げた。
「そろそろ寝た方がええよぉ。その方が治りもはようなるでぇ」
「……最後に一つだけいいですか?
名前……あなたの、名前は……?」
「ウチか? ウチはなぁ、リーア言うねん。君はなんて言うんや?」
逆に返されて僕は困った。生まれてすぐに捨てられた僕に名前はない。
「……僕は……名前なんて……」
「ほな、ウチがつけたろか。せやねぇ……アマリはどうや?」
「アマリ……」
「不満がないなら決まりやな。ほなら、アマリ。そろそろ休みまんと」
促されるまま布団をかぶる。それを見届けたリーアは微笑んだ。
「お休み、アマリ」
「……お休み、リーア」
灯りを消すと扉を静かに閉め、リーアは行った。
外はまだ明るい。白いカーテン越しに薄明かりが差し込んで、部屋の中の様子が見えた。
窓辺に揺れているのは、白く咲き誇る百合の花。
「……リリー?」
つぶやくと花は答えるように揺れた。
「……ありがとう」
思えば、生まれて初めてかもしれない。そんな微笑みを揺れる花に向けて。
僕は穏やかな気持ちを抱いてまどろみの世界へ入っていった。


――大丈夫。
この手はいつもあなたに差し出されてる。
大事なのは、あなたが一歩を踏み出す勇気――



あとがきっぽいもの。
……2時間くらいかけて、ノンストップで書き上げました。うはぁ。
自分生まれも育ちも東京なもので、関西弁はかなり怪しいです。
というわけで意味が通じればOK!くらいの心持ちで読んでいただければ幸い。
リリーは百合の花。リーアはそれをもじった名前。アマリは百合に似ているアマリリスから。
……疲れた。
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ゲーマー猫好きひっきー体質。これはひどい。

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