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感想を語ったり普通に日記だったりするブログ。時々愚痴も出る。 語るのは主にTRPGリプレイものとサンホラと自サイト関連の話。
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それは推敲と言わないなんてつっこみは野暮ってもんですよ?
仮上げしますがまだどんどんつけ加えていく予定。
自分的に完成したらその旨本文(ここ)に書きます。
不十分な状態でも読んでみたい場合は続きからー。完成形じゃないと嫌な場合は本文が変わるのをお待ち下さいなー。
ちなみに題材は以前からごにょごにょ言っていた「樹氷の君」。妄想補完したノベル化なんじゃないのかな(適当)
直接ブログ打ちはあれなんですよ。途中でいきなり画面戻りされて全部パー、ということがあるから恐いんです。
じゃあメモ帳にでも書いてからやればいいだろうとお考えでしょうが、それだとやる気が続かないのです(本人は至って真剣)

久しぶりに更新ー。城においてもらえることに。

+ + + + + + + + + +
風が哭いている。
樹氷の木々の隙間を縫って渡る風が全てを嘆くように。
声無き叫びを上げて哭いている。

乙女はそっと空を見上げた。
深く垂れ込めた空は今にも白い涙を落とし始めそうだった。
雪が降り始める前に帰らなければいけない。けれど、どの途を行けば良いのだろう?
凍りついた木々はどれも同じ様相に見える。目印などまるでなかった。
わからないのならせめて歩き続けなければいけないだろう。このまま雪が降れば、待つのは眠りという形の死のみなのだから。
白い息をかじかむ指にふきかけ、乙女はあてもないまま歩き出した。

こんな所にお城……?
空からちらちらと白いものが舞い始め、乙女が焦りを感じ始めた頃。
視界が開け目の前に現れたものが信じられず、乙女は2,3度瞬きをした。
柱か壁から、全てが氷でできている大きな城。
美しい城なのに、どこか寂しいと思ってしまうのはそれが温もりのない氷でできているせいだろうか。
ためらいながらも乙女は氷の門を叩いた。せめて雪が止むまで入れてもらえないかしらと考えていた。
お礼に渡せるものなど何も持っていないが、仕事の手伝いでもなんでも言いつけられればやる覚悟だった。
雪を纏った風に震えながらしばらく待ったが。しかし返事はなかった。
もう一度叩いて待ってみたものの誰も出てこない。
誰も住んでいないお城なのかしら?
乙女は心の中で謝りながら、静かに門を押した。氷の扉は音もなく開いた。
玄関口はちょっとした舞踏場のようだった。広い空間があり、正面には大きな階段。左右にも部屋がいくつかあるようだ。
しかし城の中は暗かった。灯りがついていない。
やっぱり誰もいないのね……。
安堵とも落胆ともとれるため息を一つ吐くと、乙女はこれからどうするかを考え始めた。
雪はもはや吹雪と化していた。完全に止むには時間がかかるだろう。
だとすれば、今夜はここに泊まった方がいい。氷でできた城の中でも、外で風に当たるよりは格段に暖かい。
まずは熱と灯りをなんとかしないといけない。火を起こせれば両方解決する。逆に、火を確保できなければこの城の中で凍死してしまう危険性が高い。吹雪くようなこの気候の中布団もなしに眠ればどうなるか、想像に難くない。
欲を言えば食事も取りたいが、人のいない城に食料が残っているのかといえば望みは薄い。運が良ければ貯蓄食料が冷凍保存されているかもしれないが、期待しない方がいいだろう。
いずれにしてもまずは台所を探そうと決意した。かまどのための焚き木や火打石がある可能性が高いし、もしかしたら食料もあるかもしれない。
人間というものは目的が決まれば少しは元気が出てくるものだ。乙女も、樹氷の森をさまよっていた時よりは幾分明るい表情で歩き出した。

しかしその表情はすぐに一転することとなった。
台所は見つかったものの、火を起こせるものが見つからなかったのだ。それどころか、鍋台もかまどもない。
この城の住人は調理をしなかったのだろうか? こんな大きな城をかまえていながら、そんな馬鹿な話があるだろうか。
食料の備蓄場と思しき場所ものぞいてみたが、食べ物も一切なかった。
乙女は絶望したもののすぐに頭を切り替えた。
城主の食べ物の好みが特殊だったのかもしれない。きっとそうだ。冷たいものが好きだったに違いない。
しかし、いくら冷たい食事が好きでも暖をとらなければ死んでしまう。ならば、寝室には暖炉があるのではないだろうか。
また無駄足になるのではないかという考えを振り払い乙女は城主の寝室を探し始めた。

灯りを探さなければいけないという心配は杞憂だったようだと乙女は気付いた。
どうなっているのかわからないが、氷の壁が仄かに青白い光を放っている。おかげで城内の様子を知るのに不自由はなかった。
青白い回廊を渡り、乙女は城主の部屋を探した。
部屋を一つ一つのぞき、何か使えるものがないか確認する。そして何も見つけることができずに次の部屋へ向かう。
そんな行為を何度繰り返しただろうか?
乙女の顔には疲労とあきらめの色が濃く表れてきていた。
部屋の一つ一つは豪奢だった。しかし、どの部屋もどこか白々しく、人が暮らしていたことを思わせる生活感がまるでなかった。
本当はここに人なんて住んでいなかったのかもしれない。金持ちが気まぐれで建てたものの、あまりの環境の悪さにすぐ放棄した城だったのかもしれない。だとしたら目的の暖炉も見つからないのではないか……。
暗い考えに囚われていく乙女。
心の声に惑わされて歩みを止めようとしたその時、彼女の耳は音を聞きつけた。城の外で吹き荒れている風の音とは確かに違う。何かが動いたような音だった。
息を呑んだ乙女はわずかにためらったが意を決し、音がした方へ足を向けた。

その部屋は扉の趣からして他の部屋とは一線を画していた。
きっとここが城主の部屋なんだわ……。
先ほどの音が何の音だったのか、わからないままだ。扉をあけた先に待っているのは、拍子抜けするような結末かもしれない。案外、開けっ放しの窓から入り込んだ風で物が倒れただけということもある。
それでも予感めいた何かを感じ、乙女は扉の前で大きく息を吸った。
「――誰だ」
心臓が止まりそうだった。
次の瞬間には逆に早鐘のような鼓動を打ち出す心臓。
声がした。男の声。確かに部屋の中から聞こえた。
動揺で頭の中が混乱しながらも、乙女は言うべき言葉を探した。
「……えっと……あ。……あの、勝手に入ってごめんなさい。門は叩いたのですが、返事がなかったものでてっきり誰もいないのかと……本当にごめんなさい!」
扉越しに乙女は謝った。向こう側にいる男は気分を悪くしたのか返事がなかった。乙女は再び口を開いた。
「ず、図々しいお願いだとはわかっています。ですが、どうか一晩でもこの城に泊めていただけないでしょうか? 差し上げられるものはありませんけど……私、掃除でも料理でもなんでもしますから!」
そこまで言って乙女は口をつぐんだ。どんな返事が来るだろうか。もしもだめだと言われたら、吹雪が吹き荒れる外へ出て行かなければいけない……。
不安を抱えたまま乙女は待ったが、男は何も言わなかった。
まさか、先ほど聞こえたと思っていた声は幻聴だったのだろうか?
「……あの……?」
「……礼はいい。この城に留まるのも……そうしたいのなら好きにするといい」
沈黙に耐えかねた乙女が口を開くのと同時に、再び男の声がした。
男の回答に乙女はほっとした安堵の表情を浮かべた。
「ありがとうございます!」
「…………」
男は何も言って来なかったが、乙女はきっとこの人は話をするのが苦手なんだろうと見当をつけた。
気が緩むと同時に体が冷えてきた。小刻みに震える自分の体を抱きしめ乙女は男に問いかける。
「重ね重ね申し訳ないのですけど、部屋の中に火はありませんか? 少し暖を取らせていただきたいのですが……」
「……寒いのか」
今度は少しの間だけで返事が来た。
「はい。……だめでしょうか?」
「……わかった。入って来るといい」
「本当ですか? ありがとうございます!」
嬉々として扉に手をあて、乙女ははたと気がついた。
この声の主は見ず知らずの自分に無条件で一晩留まることを許可してくれた。そのことと人に会えた安心感から考えていなかったが、冷静に考えればもう少し警戒すべきではないのか。
城の中では他に人の姿はなかった。つまり、今この城には扉の向こうにいる男と自分しかいないことになる。
先ほどは見返りはいらないと言われたが、本当にそれで済むだろうか。何かあっても助けは呼べないのだから、慎重にならなくては……。
「……どうした」
扉を開けずに迷っているところへ、声が淡々と聞いてくる。そこにはいぶかる色もなければ焦る様子もなかった。それが焦れている声音だったなら乙女もためらったが、実際にはあまりに無表情だったので逆に背を押すことになった。
……何かあったらその時はその時よ。それに、このまま立ち去ってもどのみち凍え死んでしまうわ。
「失礼します」
覚悟を決めた乙女は扉を押す手に力を込めた。氷の扉は音も無く滑り、来訪者に道を譲った。
部屋は想像していたよりは広くなかった。装飾品もさして置かれていない。
しげしげと部屋の様子を眺めていた乙女の目が部屋の隅にある寝台へと向けられる。そして、その上で座っている男に目が釘付けになった。
乙女は呼吸さえも忘れて男に見入っていた。
絹のような美しい白布に身を包み、そこから伸びる細い四肢もまたぬけるような白い色。
端整な顔立ちは神の手が彼を造り上げたのかとさえ思わせる完璧な美。その顔が、その体が。男でありながら不思議な妖艶さを纏っていた。
何よりも――彼の目が心を惹きつけて止まない。伏せられた睫毛、海の底を見ているようなその瞳が深い憂いを抱いている気がしてならない。
あぁ、どうしてそんな哀しい瞳をしているの? 見ている私まで胸がしめつけられそう……。
「……火が欲しいと言っていたな」
自身を凝視する乙女の視線に気を払うことなく男は言った。言われて乙女は我に返り慌ててうなずいた。
「は、はい。そ、その、勝手に城の中を探したのですが、どこにもなくて……」
「……当然だ。わたしは使わないのだから」
綺麗な声……。
それどころではないはずなのに、乙女は彼の声に聞き惚れていた。しかしその淡々とした声の中にもまた憂いを見た気がして心がかき乱される。
男は瞳を閉じて考えるような素振りを見せた。乙女は彼が再び口を開くのを待った。
手をのばすと、男は部屋の反対側にある机の方向を指した。
「……そこの燭台を」
乙女は部屋を横切り氷の燭台を手に取った。
しかし、蝋にあたる部分まで氷でできたこの燭台でどうするのか見当もつかなかった。
「……近くへ」
指示されるまま男のそばまで歩いていく。少しずつ彼に近づいていくことに胸が高鳴った。
男は静かに燭台を見つめていたが、不意に手をのばした。
受け取ろうとしているのだと思い乙女は差し出したが男の意図は違った。
男の指先には蒼白く燃える焔が灯っていた。
乙女が目を見開いて成り行きを見守っているうちに男は三本の蝋燭全てに蒼い焔を灯していた。
「……これでいいだろう。その焔は消そうとしない限り燃え続ける。暖も取れよう」
「あ……ありがとうございます」
目の前で起きたことに驚きを隠せなかったが、乙女は素直に感謝の意を表した。
蒼く燃える焔はその冷たい色に反して温かかった。見たことのない焔に乙女はまじまじと見つめていた。
「……もう用件は済んだな。部屋はいくらでもある。好きなところで休むといい」
男は乙女を追い出しにかかった。少なくとも、そう取れる発言だった。
しかし乙女は素直に従いたくなかった。もっと彼のそばにいたい、もっと彼のことを知りたい。そう強く願っていた。
もはや自分のことなど眼中にないかのように視線をそらした男に対し乙女は声をかけた。
「あの……」
「……まだ何かあるのか」
「火までもらいましたし……やっぱり私、何かお礼をしないと……」
「……礼はいらないと言った。余っているものを与え、持っている力を少し使っただけだ。
それに、してもらいたいことは何もない」
あくまで無感情に男は告げる。それでもなお乙女は、少しでも男のそばにいる時間をのばそうと話題を探した。
その時、ふと確認していなかったことを思い出した。
「あ……。今さらで恐縮ですけど、あなたがこのお城の城主様……ですよね?」
「……そうだな」
「そ、そうですよね。それで、名前はなんとおっしゃるのですか?」
「…………」
男は答えなかった。代わりに、乙女をまっすぐに見つめている。蒼い瞳に射止められ乙女は目がそらせなかった。自分の心臓の音があまりにうるさいので男に聞こえるのではと思ってしまう。
乙女を見据えたまま男はゆっくりと唇を開いた。
「……当ててみろ」
「え?」
「……わたしの名だ。何という名か考えてみるがいい」
簡単なゲームのつもりなのだろうか。男は乙女が何と答えるのか期待しているようにも見えた。
しかし乙女にしてみてはそれどころではなかった。逆に聞かれるとは予想もしていなかったためひどく狼狽していた。
名を当てるなど、途方もないことだ。そもそも文字数はいくつなのだろう。最初の文字は?
答えが出ないまま男を見る。憂いを帯びた美しい城主は静かに視線を返す。
この方は……樹氷の森の中にある氷の城に住まう城主様。
「樹氷の……君……?」
答えるつもりではなく、言葉が自然に口をついて出た。
「……樹氷の君……」
乙女は答えたつもりではなかったが、男はそれを回答を受け取ったらしく口の中で繰り返した。慌てた乙女が取り消そうとする。
「い、いえ、今のは……」
「……いいだろう。それがわたしの名だと思うなら、そう呼ぶといい」
正解ではなかった。しかし乙女の答えが正解にすり替わった。
乙女は男の本名を知りたかったのだが、今さら本当は何と言うのですかとも聞けない雰囲気だった。
小さくため息をつく乙女に、樹氷の君は言った。
「……もう話はいいだろう。部屋をみつくろって休め」
これ以上は食い下がれそうにない。その気配を悟って、乙女はうなずいた。
「はい。ありがとうございました、樹氷の君。おやすみなさい」
君は何も言わずに乙女を見送った。
部屋から出た乙女は、すぐ向かいにあった部屋に入った。
蒼い焔が燃える燭台を机に置くと、ベッドに座り込んだ。台は氷でできているものの、ちゃんと毛布が置かれていた。
他にすることもない。空腹を覚える前にもう寝てしまおう。
そう決めて布団にもぐりこんだものの、乙女はなかなか寝付けなかった。
向かいの部屋にいるであろう君の姿が脳裏にやきついて離れない。彼を思い出す度に胸が熱くなって目が覚めてしまう。
乙女がやっと眠りにつくことができた頃には既に空が白み始めていた。
すっきりしない寝覚めを迎えた乙女は、一つの決意を固めた。

「どうか私をこの城において下さい」
乙女は樹氷の君に、深々と頭を下げた。君は寝起きのような体勢で乙女をながめていた。
「……どういうことだ」
「このお城にとどまり、あなたにお仕えしたいのです。言われたことはなんでもいたします。ですから、どうかお傍において下さい。お願いいたします」
乙女は自分が樹氷の君に激しく恋焦がれていることを自覚していた。そして、君から引き離されればきっと胸が引き裂かれるような絶望に苛まれるだろうとも思っていた。
そのため、君に出て行けと言われる前に自分からとどまりたいと申し出たのだった。
「…………」
君は黙り込んでいた。沈黙に包まれた空気が重苦しい。
樹氷の君がやっと口を開いたのはしばらく経ってからだった。
「……好きにするがいい。この城で生活ができるかどうかは保証しないが」
相変わらず感情の薄い言い方だったが、乙女はぱっと顔をほころばせた。
「あ……ありがとうございます! あ、えっと……まずはお掃除でもしましょうか!?」
「……掃除するまでもない。汚れていないものを掃除して何になる」
なんでもすると言った手前、とにかく働かないといけない。そう思った乙女が申し出たが、あっさりと断られた。
「……私の身辺よりまずは自分のことを考えたらどうだ。昨日から何も食べてはいまい」
「あ……」
指摘されて乙女はうつむいた。言われた通り、ずっと食事をとっていない。
「……まずは腹を満たすことからだな」

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ゲーマー猫好きひっきー体質。これはひどい。

普段自分の趣味を語らないんですが、

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