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感想を語ったり普通に日記だったりするブログ。時々愚痴も出る。 語るのは主にTRPGリプレイものとサンホラと自サイト関連の話。
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死せる英雄達の戦いー。戦闘の描写なんか書けるわけないさー。
こっちに載せる一連のミラ作品はこれで終わりです。
続きはwebもといHPで! ブログから直接リンク繋がってないけど!(笑)
いやー、小切りで出していった方がなんかやりやすいですねー。


+ + + + + + + + + +

 アメティストス率いる奴隷部隊は風の都に至っていた。
 一度たりとも敗北も喫したことのない部隊は高い士気を見せていた。
 敵を寄せ付けまいと聳え立つイリオンの壁を遠目に見ながらオルフはつぶやいた。
「難攻不落の風の砦……」
 将軍であるアメティストスの傍らに控えながら、オルフはにやりと笑う。
「これを破ればもはや我らに敵などありますまい」
「気を引き締めてかかられよ、オルフェウス殿。貴公は些か自惚れが過ぎますぞ」
 黒髪の男、シリウスがオルフを諌める。オルフは何か言いたそうな顔をしたが、将軍の前であることを考え引き下がった。
 睨むように風の盾を見据えていたアメティストスはつぶやいた。
「……往くぞ」
 すらりと双剣を引き抜く。
 それを見た一番隊の隊長が剣を掲げ、叫んだ。
「アメティストス将軍に続けー!!」
 応と答える鬨の声が号令となり戦は始まった。
 敵の接近に、風の砦からは矢が幾重にもなって仕掛けられる。
 しかし、統率が取れていない。どこか腰が引けていて狙いも甘い。
 そんな弓兵達を見たオルフは挑発的に言った。
「小雨がちらちらと煩わしいですな」
「安全圏からしか撃てぬ腰抜け共め!」
 敵ながらその臆病さに憤慨したのかシリウスが吐き捨てるように罵った。
 飛来した弓矢を叩き落し、アメティストスは冷めた声で指示した。
「弓兵は相手にせずとも良い。オリオン亡き今、奴らはただの雑魚に過ぎん」
 共にこの地から逃走した友はイリオンで弓部隊を率いていたが、先ごろ落命したとのことだった。

 オリオン。
 お前が今の私を見たら、なんと言っただろうな。

 敵方も、ようやく弓部隊があてにならぬと気付いたらしい。
 慌てて前衛部隊を吐き出した砦を見てシリウスはせせら笑った。
「閣下。敵の指揮官はどうやら――」
「猪突猛進しか知らぬ馬鹿のようですね」
「ですな」
 シリウスとオルフの声が重なる。
 考えなしの指揮官を持った敵にむしろ憐れみさえ覚えながらアメティストスは指示を下す。
「シリウス! お前の部隊は左。
オルフ! お前の部隊は右から回れ。挟撃するぞ!」
「は!」「御意」
 一つ頷くと金と黒の指揮官は各々の方向へ散った。
 敵と真正面から当たる中央部隊は自ら率いる。それが総大将の務め。
 かかる火の粉を全て斬り伏せ紫眼の狼は前へ進んだ。
 黒い刃が閃く度に一つ、また一つと命が消えていく。
 血の道を敷きながら進むアメティストは、前方から声をかけられた。
「貴様が悪名高いアメティストスとやらか!」
 誰何の声に視線を向ける。
 見れば、一際立派な鎧を身にまとった男が刃を向けていた。
「我が名はイーリオス! これ以上貴様の好き勝手にはさせん!」
 イーリオス。風神アネモスの眷属であるイリオンの英雄か。
 アメティストスはふ、と笑った。
「なるほど、お前が馬鹿な指揮官か」
「何っ!?」
 激昂したイーリオスはまっすぐに斬りかかってきた。アメティストス二本の剣でそれを受ける。
 二度三度斬り合うと一旦離れて間合いを取った。
 両者はじりじりと間合いをはかる。
「でやああぁぁ!」
 仕掛けたのはイーリオスの方だった。大上段から斬りかかり、一気に勝負を決めにかかった。
 迎え撃つアメティストスはギリギリまで相手を引き込むと体をそらし、前に出た。
 一瞬相手を見失ったイーリオスは間もなく自らの敗北を悟った。
 アメティストスの刃はイーリオスに深い傷を負わせていた。
 ごふ、と血を吐くとイーリオスは膝をついた。
「馬鹿な……私にはアネモス様の加護……が……」
 アメティストスは黙って刃を振り下ろした。
 最期まで信じられない顔をしたまま倒れ伏し、英雄イーリオスは絶命した。
 アメティストスは淡白にそれを見下ろしていた。
「姿なき神に縋りたいならそうすればいい。縋ったところで神は何もしてはくれないがな」
 目の前で英雄の死に直面し、周囲を取り囲んでいたイリオン兵達は一気に浮き足立っていた。
 士気がくじけた敵軍をアメティストス軍は蹴散らしていく。
 前からぐいぐいと押し込まれ、さらに両側からも容赦ない攻撃を加えられた頭無きイリオン軍を攻略するのにさして時間はかからなかった。
 沈黙した戦場にアメティストスは立っていた。
 紅い緋い死の渚。
 今は物言わぬ屍。彼等にも一人一人物語があっただろう。
 されど――ささやかな希望さえ、運命は赦さなかった。
 頭上では大きな翼を持つ鳥が円を描いて飛んでいた。死肉を狙う禿鷹だ。
 変わり果てた彼等に接吻する者は、ああ。愛する恋人などではなく、飢えた禿鷹のみ……。
 表部隊を制圧したアメティストス軍が続々と将軍の元へと集結して来ていた。
 皆が集まったことを確認すると無敵と謳われた砦の高い壁を見上げ、アメティストスは声高に叫んだ。
「久しいな、イリオンよ。我等、忘れはしまいぞ!
お前を守る盾が、誰の血によって築かれた物かをなぁッ!」
「号令を、閣下!」
「突撃ぃぃぃっ!!」
 将軍の一声で奴隷部隊はイリオンへとなだれこんだ。
 惨劇。されどその時流れた血の数はそれまでに散っていた奴隷の命の数に比べれば少なかろう。
 神殿も押さえた奴隷部隊はイリオンを完全に掌握した。
 アメティストスは風神官の部屋に足を踏み入れていた。
 神官が変わったらしく、部屋の様子は変貌していた。しかし間違いなく、ここはあの時の部屋なのだ。
 運命に導かれるように再会した、あの時の二人。
 もし、あの日。
 もしあの日、嵐にさえ巻き込まれなければ。そうすれば二人は今だって……。
 そこまで考え、アメティストスは首を振った。
 考えても仕方のないことだ。今さらもしもを考えて何になる?
 過去を振り払うと将軍は部下達のところへ足を運んだ。
 恐らく、東夷の侵略を食い止めていたイリオンの陥落の報は各地に伝わるはずだ。
 そしてこの脅威に対抗するために各国から刺客が送られてくるだろう。
 戦いはこれから激化する。
 アメティストスは口元に凶暴な笑みを浮かべた。
 構うものか。
 かかってくるのなら、死という約束を果たさせるまで。
「閣下!」
 伝令が飛び込んできた。
「アルカディアよりの軍がこちらへ向かっているとのことです!」
「わかった、受けて立つ。全軍に戦の準備をさせろ」
「は!」
 一礼すると伝令は下がった。
 アメティストスは窓から空を仰いだ。

 見ているがいい、運命の女神よ。貴柱の仔等が屠り合う様を。

 先のイリオン戦とは異なり、アルカディア軍は密とした連携が取れていた。
 なかなか敵の守りを崩せないことに軍内で焦りが高まっていくことを肌で感じる。
 頭さえ潰せれば。
 アメティストスは剣を強く握り締めた。
 統率の取れた動きも高い士気も、それを率いる頭があればこそだ。
 アルカディア軍のトップさえ潰せれば後は容易い。
 忌々しげに敵軍を眺めていると、敵の中に一際目立つ活躍をしている武将に気付いた。
 恐れを知らずに敵陣に斬り込み薙ぎ払っていく。槍を振るう様はさながら戦神のようだ。
 茶色い髪に一房、金色の髪が交じっている。よく見ればまだ若い青年ではないか。
「おい、あれは誰だ? あそこで奮闘している槍使いだ」
 手近な部下に尋ねると、彼は言った。
 アルカディアの王、レオンティウスである――と。
 それを聞いたアメティストスは迷わなかった。
 引きとめようとする部下を振り切り戦場へ飛び込むと真直ぐにレオンティウスへと向かって行く。
「奴がアルカディアの……憎き地の国王」
 立ちはだかろうとしたアルカディア兵を斬り捨てる。ただレオンのみを見据える目には深い憎しみの色。
「ミーシャの仇!」
 アメティストスの接近に気付いたレオンは向き直り、名乗りをあげた。
「勇者デミトリウスが仔、レオンティウス。私が相手になろう!」
「望むところだぁッ!」
 全力を込めた一撃を初手から送り出す。
 その重い一撃をレオンは受け止めた。
 押し返すと一歩踏み込み槍を突き出すがアメティストスは上半身をひねってそれをかわす。
 五分と五分の攻防が何手にも渡って繰り返された。
「く……っ!」
 寸でのところで刃を防いだレオンは内心でつぶやいた。
 アメティストス……やはり只者ではない!
 体勢を整えると槍を翻した。
 敵に感心したのはレオンだけではなかった。
 この男、強い……!
 一方は狼と謳われ
 一方は獅子と歌われた男達。
 互いの力量を認めながら、しかし譲る気はない。
「何故これ程の男が……」
 つぶやいたレオンは距離を取った。アメティストスは油断なく双剣を構える。
 レオンはアメティストスを睨むと、ずっと抱いていた疑問を口にした。
「アメティストス! 同胞であるお前が何故、バルバロイの侵略に加担するのだ!」
 同胞……?
 レオンのその言葉にアメティストスは昏い目で答えた。
「祖国が私に何をしてくれた。愛する者を奪っただけではないか!
笑わせるなぁ!!」
 怒りに突き動かされ、アメティストスは剣をかざした。レオンも迎え撃つべく槍を構える。
 ここで勝負が決まる。そう誰もが思ったその時。
「お止めなさい!」
 二人の間にひとりの女性が飛び込んできた。
 レオンはその人物に気付き目を見開いた。
「は、母上!?」
 母の姿にレオンは踏みとどまった。しかしアメティストスは止まらない。
 凶刃が飛び込んできた女性諸共レオンを刺し貫いた。
「うわぁ!」「あぁっ!」
 悲鳴を上げると二人は折り重なるように倒れ伏した。
 レオンに母と呼ばれた女は、顔を上げると震える手を伸ばした。アメティストスは彼女の背に黒い影を見た。
 ヒューヒューと息が漏れながら、彼女は最期の言葉を紡いだ。
「レオン……エレフ……。お止めなさい……っはぁ」
 苦しそうに顔を歪めると女は力尽きた。伸べていた白い手も地に落ちる。
 母の死に様を見ていたレオンもまた己の死期を悟っていた。
「母上……! ミラよ……うっ」
 小さく呻き――アルカディアの王は息を引き取った。
 勝利したアメティストスは、しかし困惑した顔で二人を見ていた。
 エレフ。
 女は確かにそう言った。
 あり得ない。何故その名を知っている?
 奴隷を解放し始めた頃からアメティストスとしか名乗っていない。なのに、アルカディアの后が何故、私の本当の名を知っている――?
 さらに彼女はレオンとエレフの戦いを止めようとした。敵対する相手だというのに。
 何故?
 最期に自分を見た彼女の目には哀しみと慈しみがあった。
 私はその目を知っている。同じ目を見たことがある。
 最後に母を見た、あの時の母と同じ目。
 ならば――まさか――
 エレフの思考が一点に向かおうとしていたその時、馬が駆けてくる音が耳に入った。
「私を置いて逝くな!」
 馬上の女が何か叫んでいる。弓を背負い槍を手にしたその出で立ちは恐らくアマゾンの者。
 まっすぐにこちらへ向かってくる彼女に、アメティストスはゆらりと剣を向けた。
「許さんぞ……レオンティウス! ――うっ!?」
 容赦なく。
 アメティストスは彼女を斬り捨てた。
「ぐふっ……」
 ぐらりと体が傾くと、彼女は馬から転がり落ちた。
 体温を失っていく女の体を冷たく見下ろすアメティストス。
 もういい。
 ぽつり、とつぶやいた。その呟きは誰の元にも届かない。
 もういい。
 部下の呼び声も届かずに、紫色の瞳は虚空を見つめている。
 ミラよ。
 貴柱が命を運ぶのならば。
 私はそれを殺め続けよう。
 生こそがこの世の苦痛。
 ならば。
 私は――殺め続けることで救い続けよう。

 冥府の王タナトスが、ここに現生した――。

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