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感想を語ったり普通に日記だったりするブログ。時々愚痴も出る。 語るのは主にTRPGリプレイものとサンホラと自サイト関連の話。
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のっている間に進めるぞーというわけで昨日の今日でミラの続き。死せる乙女ー。
自分としては最期の時にエレフは泣き笑いを浮かべていたと信じてる。悲しみながらも、月を手に入れたミーシャを祝福する為に。
よーし、次は冥府組が出るよっ(笑)

+ + + + + + + + + +

 ごめんね……エレフ……。

 どれほど歩いただろう。1時間は経ったようにミーシャは感じた。
「止まれ」
 声に従い足を止める。足音が一つ遠のいていくのが聞こえた。

「巫女を連れてまいりました!」
 隊長格の男が敬礼をする。言われた男はゆっくりと振り向いた。
「……ほう?」
 生贄として連れてこられた巫女の姿に、 赤い髪の男・・・・・ は面白がるような笑みを浮かべた。

「ここは水神の神殿ですか」
 ミーシャは傍らにいるであろう見張りの男に問いかけた。その問いに男は短く答えた。
「そうだ」
「本当に――巫女を捧げろという神託があったのですか?」
「そうだ」
 取り付く島もない。そう思わせる言い方だった。
 そうこうする内に足音が二つ近づいてきた。
「これより殿下が鎮めの儀式を執り行う。巫女を連れて来い」

 先ほどの場所からまた少し歩かされた。神殿の奥へ誘導されているのだろうか。
 しかし風の流れを感じる。歩いた感触も土のそれに近い。庭のようなところなのかもしれない。
 男達が立ち止まった。ミーシャもあわせて立ち止まる。
「巫女をここへ!」
 部下を指揮している男の号令でミーシャは移動させられた。
 すらり、と剣を抜く音が聞こえた。それに併せて男の声も。
「ヒュドラよ」
 あぁ……。
 死が近づいてくる。それを肌で感じながらミーシャは思った。
 残酷な女神が統べる、私が生まれたこのこの世界。
 女神を――運命を怖れず揺るがず、全てを愛す女に成れたかな……。
「受け取り給え」
 月夜に剣が閃いた。
 真赤な花を咲かせ、体勢を崩したミーシャは自身が水の中に落ちたことを感じた。
 しかし、ミーシャの意識はそれとは他のところにあった。
 先ほどの声には聞き覚えがある。
 あの……声は……。
 ――そうだ。間違いない。
 幸せだった日々の終わりを告げに来た、あの声……!
 ミーシャは目を見開いていた。
 光を失ったはずの目が映したもの。それはにやりと笑う赤髪の男の姿。
 男は悠然と踵を返し、視界の外へ消えた。取り巻きの男達もそれに従い去っていった。
「……っ!」
 腕を伸ばすが、深手を負った体では追うどころかろくに起き上がることもできない。
 仰向けになって湖面に浮かびながら、ミーシャはぼんやり思った。
 あぁ、今日は満月なんだ。
 走馬灯なのだろうか。満月を見ると余計に思い出す。幼かった頃の楽しい日々を。
 ……エレフ。
 ミーシャの瞼が、ゆっくりと落ちていった。

 星女神の神殿に至ったエレフは眉をひそめた。
 遅い時間だというのに神殿の中が騒然としている。
 ……何かあったのか?
 増幅されていく嫌な予感を押し殺し、エレフは神殿の中へ足を踏み入れた。
 途中ででくわしかけた人間をみなやりすごしながら適当に進んでいく。道など知ろうはずもない。
 ちらりと耳に入った話では侵入者があって、連中は巫女を連れ去ったらしいということだった。
 誰かに話を聞きたいところだな。
 そう思っていると、手習い中の巫女と思われる少女が二人、ひそひそと話をしていた。
「どうしてあの子が……」
「しっかりしなさい、レナ。自分から望んで行ったって話なんだから、しょうがないじゃない……」
「でも……」
「おい」
「「きゃあっ!?」」
 声をかけると、必要以上に彼女達が驚いた。目には恐怖が宿っていた。少女の一人にいたってはもう一人の陰にすっかり隠れてしまった。
 しかし二人はエレフをまじまじと見ると困惑した顔になった。
「ミー……シャ? でも、男の人だし……」
「なに!? お前達、ミーシャを知っているのか!?」
 勢い込んで詰め寄ると二人はびくりと後退したが、前に立っていた少女が戸惑いながら言った。
「知ってるも何も、ミーシャは友達よ。
……もしかして、あなたがエレフ? ミーシャの双子の兄の……」
「ミーシャを知ってるんだな! ミーシャはどこにいる!?」
「……」
 エレフの問いに二人は気まずそうに視線をそらした。その反応がエレフを苛立たせる。
「答えろ!」
 視線を泳がせながらも、エレフの剣幕にカピラは重い口を開いた。
「その……フィリスさんの話では……生贄として連れていかれたって……」
「……なん……だと……?」
 頭が理解を拒否している。
 生贄? どういうことだ?
 ミーシャが……生贄……?
「私達だって詳しいことは知らされてないわ。知りたいならフィリスさんに聞いて」
「……そのフィリスってのはどこにいる?」
「たぶん、ソフィア先生の処に行っているのだと思う。報告と相談をしに」
 場所を聞いたエレフは礼も言わずに走り出した。

「えぇ、真実です。アルテミシアさんは生贄として連れていかれました」
 エレフを出迎えたフィリスは静かな声で告げた。
「双子の兄だというあなたには謝罪しなければならないでしょう。
彼女を目の前にしながら、私は助けることができなかった。申し訳ありませんでした」
 深々と頭を下げるフィリス。しかしエレフにはなんの慰めにもならなかった。
 低い声で問いかける。
「……ミーシャを連れ去ったのはどこのどいつだ?」
「あの服装は、アルカディオのものだったと記憶しています。
海を越えた向こうにある国が何故巫女を求めてここまで来たのかわかりませんが……」
 アルカディオ。
 祖国の名を耳にしたエレフは再び衝撃を受けた。
 呆然と立ち尽くすエレフに、フィリスは鎮痛な面持ちで継げた。
「非常に言いにくいことですが……もう手遅れなのです。アルテミシアさんは――」
「水神の神殿は何処だ」
 フィリスの言葉を遮り、低く押し殺した声でエレフが問う。フィリスが諭すように言おうとした。
「ですから……」
「何処だ!」
 威圧され怯んだフィリスにかわって、状況を静観していたソフィアが答えた。
「水神の神殿は、東の森の中にあります。人が歩けるよう道ができていますから、すぐにわかるでしょう」
 いても立ってもいられず、エレフは走った。
 ソフィアが何かつぶやいたが、その声はエレフに届かなかった。

 木々の合間から透ける月明かりを頼りに夜の森を疾走する。
 どれほど走っただろう。
 体力の限界を感じだした頃、森の奥に大きなシルエットが浮かび上がってきた。
 あれが、水神の神殿……!
 もつれかける足を叱咤しながらエレフは先を急いだ。

 神殿の中は閑散としていた。
 星女神の神殿と異なり、こちらは人が常駐していないらしい。人の気配がなかった。
 何かに導かれるように奥へ奥へと進むエレフ。やがて開けた空間に出た。
 エレフの足取りが重くなった。
 行ってはいけない。
 自分の中の何かが囁く。
 行ってはいけない。ここで引き返せ。
 ――何故?
 魂を分けた双子だから、わかるんだ。ミーシャは……この奥にいる。
 それを、どうして会わずに引き返せる!?
 エレフは一歩一歩前へ進んだ。
 目の前には小さな湖が広がっていた。わずかな風で湖面が揺らいでいる。
 それに合わせるように水面に揺れる、彼 女  ハ――

「……あ……」

 呆然とした声がエレフの口から漏れ出た。
 花が、咲いていた。
 怖いほどに赤く、悲しいほどに綺麗な花が。

「うわあああああああああああああああああああぁぁぁぁっ!
ミーシャああああぁぁぁぁぁ……ッ!」
 最愛の片割れの無残な姿にエレフは慟哭した。
 両手を地面に叩きつけ、そのままうずくまり泣き叫んだ。
 他に、いったい何が出来ようか。残酷な運命を呪い叫ぶ以外に、何が。
 どれほどそうしていただろう。
 嗚咽を漏らしていたエレフの耳に、柔らかい声が聞こえた。
――悲しまないで
 エレフは弾かれたように顔を上げた。聞き間違えようがない。あの声は……
「ミー……シャ?」
 水面に漂う乙女の蒼白い顔を見る。生の息吹を感じさせない彼女は唇も動かさずに言った。
――悲しまないで。過ぎ去りし灯も、運命の贈り物だから
「ミーシャ……あぁ、ミーシャ。
やっと逢えた。ずっと、ずっと捜したんだよ。君の面影を……」
 ミーシャに向かって手を伸ばす。
 嗚呼…この哀しみは何に例えるべきだろう。
 まるで――心を二つに引き裂かれたような烈しいこの痛み……。
――ねぇ……憶えてる?
 ミーシャの声が言う。
 それは遠い日の我侭。
 水面に映る月が欲しいと手を伸ばした少女。
 今、彼女の手の中に月があった。欲しいと願っていたものが。
 また一緒に見ようね。
 そう言って少年は約束した。
 うん、見ようね。
 そう言って少女は笑った。
 遠い日の、あの約束。
 あぁ……。
 エレフは涙を流しながら――笑った。
「終に手に入れたんだね」
――終に手に入れたんだよ
 エレフは拳をきつく握りながら……言った。
「……さようなら」
――さようなら
 さようなら。
 強い風が吹き抜けると、それきりミーシャの声は聞こえなくなった。
 さようなら…私の片割れ。
 心の中の空虚感に耐え切れず、エレフはまた泣いた。
 涙が枯れた時、エレフの心には別のものが芽生えていた。
 暗い――昏い復讐の念……。
 あぁ、そうか。
 エレフはつぶやいた。

 総ては――貴柱の遊戯ということか、ミラよ。
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ゲーマー猫好きひっきー体質。これはひどい。

普段自分の趣味を語らないんですが、

ネット上でくらいはっちゃけちまえ

と思いブログ開設。

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時々愚痴も入る。人間だもの。

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