朝夜

今回は考察の類ではなく。
この間何気なく書いた「夜子は自分の存在価値がなくなるのが怖くてイヴェが生まれるロマンを探さない」という話。
あれがちょっと脳内で膨らんできています。

構想なのか部分書き出しなのかよくわからないものがつづく。
こういう二次創作系の話が膨らむのはちょっと珍しい。

ロマンを探すふりをしながら、全くその気がない夜子。
やがて夜子が手を抜いていることに気付いた朝子は理由を問いただす。
夜子はぽつりぽつりと自らの考えを語り、今度は逆に朝子に迫る。

「本当にこのまま探し続けるの？あるかどうかすらわからない、ムッシュが生まれる物語を。
苦労の末に見つけ出してもそれは私達の首をしめるだけなのよ。
もうムッシュは人形（私たち）を必要としなくなる！ねぇ、オルタンシア！本当にそれでいいの！？」

しばし沈黙した朝子は静かに言った。

「でも、それが私達の役目なのよ」
「じゃああなたはムッシュに見捨てられてもいいと言うの！？」
「ヴィオレット。私達はムッシュのロマンを探すために生まれてきたのよ。
その仕事を放棄したら、私達は何の為にいるの？
ムッシュの願いを封じ込めたまま、おめおめとムッシュに顔向けできるの？」
「それは……でも……」
「あなたの思いは痛いほどわかるわ。私だって、ムッシュにもういらないと言われたらと思うと胸が張り裂けそう。
でもね、ヴィオレット。私達は、ムッシュの為のお人形だから。
ムッシュの笑顔を見るために頑張るのが私達のお仕事。
最期に生まれていくムッシュの笑顔を見られたら、きっと「頑張ってよかった」って思えるわ」
「…………・」
「いらない存在になるのは悲しいけれど、それが人形の役割。
子どもが小さいうちに役に立てばいい。でもそれはいつまでもとっておくものじゃない。
子どもが大人になれば人形は部屋の隅に、物置に、そしてゴミ箱へとおいやられていく。
けれどその子を築く礎にはきっとなっている。そう思えば私は怖くないわ。
ムッシュのわずかな思い出の中で私たちは生きるの。
だからヴィオレット。悲しい未来におびえずに探しましょう。
そしてムッシュが生まれる時には私が、そしてムッシュが死ぬ時にはあなたが、ムッシュの傍にいてあげる。
それでいいじゃない」
「……空想論だわ」
「悲観主義よりは楽しく生きられていいと思わない？」
朝子の言葉に小さく笑う夜子。
「……わかった。私もちゃんとロマンを探すことにする。でもあなたとは志が違うから」
「どういうこと？」
「私がムッシュと同じ場所に生まれるロマンを探す。そうすればまたムッシュと一緒にいられるから」
「まあ！ずるいわヴィオレット！その時は私も一緒よ！」
「そうね。また３人で一緒にいましょう、オルタンシア」
「えぇ、えぇ、それがいいわ！そうと決まれば早く探しにいかないと！」
意気込んで飛び出すオルタンシア。
その後姿を見守り微笑むヴィオレット。
「ありがとう、オルタンシア。
人形にすぎない私もロマンを見つけることができた」
つぶやくとそっと目を閉じる。
瞼に浮かぶのは己の主。彼は夜子に手を差し出すと、唇を開いた。

『さぁ…往っておいで』

「ウィ……ムッシュ……」
虚空にむかってつぶやくと、紫の姫君はロマンを求めて飛び立った。



うわーい。勢いだけでばーっと書いてしまった。書き始めた時どんなやりとりするかは考えてもいなかったのに。
どうしようかなぁ。もう少し手を加えたら自サイトの方にも出そうかなぁ。
朝子が達観しすぎとかいうつっこみは受け付けません。残念だったね！